スリックかそれともインターミディエイトか

昨晩の内に小雨は上がり、朝のフリー走行時はドライ路面。しかし、各種サポートレースが終わって正午頃になると、小雨がパラつき出してしまう。しかも、この小雨がくせ者。サーキット全面が完全なウェット状態になるほどの量ではないのだ。ドライとウェットが混在する、非常に見通しの立てにくいコンディションである。そのため、スリックと、浅溝のインターミディエイトと、選択が別れる状況に。ただし、スリックは少なめで、GT500は2台。松田次生(パートナーはセバスチャン・フィリップ)が乗る12号車「カルソニック IMPUL GT-R」(予選12位)と、アンドレ・クート(パートナーは高木虎之介)が乗る39号車「DENSO DUNLOP SARD SC430」(予選14位)だ。

スタート前のグリッドウォークの様子。超混雑状態

グリッドウォークの混雑の中、細部の調整などをするのだからスタッフも大変

予選5位の100号車「RAYBRIG NSX」の前半担当の井手有治

予選7位の18号車「TAKATA 童夢 NSX」の前半担当の小暮卓史

予選8位の36号車「PETRONAS TOM'S SC430」の後半担当の脇阪寿一

小雨がパラつき、タイヤチョイスで各チームとも悩む状況に

フォーメーションラップが近づき、ピットクルーもコース上から退去開始

GT500決勝レポート・途中で雨足が強まって展開激変

14時に決勝はスタート。全66周だ。GT500の決勝出場台数は16台。路面温度が低いため、特別に2周のフォーメーションラップを行ってからのローリングスタートとなった。雨足が強まることを予想していたチームが多かったが、小雨は降っているものの、セクター1と2はドライ、3がウェット気味という具合で、スリックに賭けたチームがビンゴ。そのため、ミハエル・クルム(パートナーは柳田真孝)が乗る22号車「MOTUL AUTECH GT-R」を皮切りに、インターミディエイト組は次々とスリックに換えるべく、ものの数周でピットに飛び込んでいく。ポールスタートをした17号車は、これまでもいい予選順位からスタートしながら、展開に恵まれなかったり、ミスをしたり、トラブルが起きるなどなかなか結果に結びつかないのだが、今回もうまくいかず。慌ただしい展開に飲み込まれ、結局トップで走れたのは3周目までとなった。

スタート直後。17号車を先頭に各車1コーナーへ向けて殺到

24号車と1号車がピットアウトしてきたところ。両クラスが序盤からシャッフルされて混乱状態に

今回も展開に恵まれなかった17号車。順位を下げ、1号車を追走中

スリックを選択した2台の内、14番手からスタートした39号車は、インターミディエイト組が次々と緊急ピットインする中、周を重ねるごとに順位を上げ、5周目にはトップに。12番手スタートの12号車はそれよりも若干遅れるが、6周目には2位に上がり、18周目には39号車を抜いてトップとなる。また、素早い緊急タイヤ交換で送り出された、ブノワ・トレルイエ(パートナーは本山哲)の乗る23号車「XANAVI NISMO GT-R」は、9周目には3位にアップ。本山/トレルイエ組は、5位以上なら無条件で王座獲得なので、このままいけば楽な展開である。しかし、ウェイトハンデ80kg(実際には性能調整でさらにウェイトを積んでいる)のためにタイヤの痛みが激しく、18周過ぎからズルズルと後退してしまう。ランキング2位の17号車「TAKATA 童夢 NSX」(小暮卓史がドライブ、パートナーは道上龍)にも抜かれ、やむなく3分の1周回を過ぎた23周目に早めのピットイン。本山への交代、給油、タイヤ交換(スリックのまま)を済ませる。しかし、この早めのピットストップが、この後すぐにNISMO陣営を慌てさせることになる。25周目頃から雨量が増え始めたのだ。あっという間に路面はウェットとなり、ドライでは危険な状態。やむなく、本山は23号車を緊急ピットインさせ、レインに交換。ピットアウト時は得点圏外の13位に落ちてしまっていた。

5周目。スリックタイヤの39号車がトップで1コーナーへ。背後には36号車

12号車も猛チャージ。6周目には2位に着け、18周目でトップに

予選並みのスパートをかけて9周目には3位に浮上した23号車

猛チャージの38号車・17点差をひっくり返して王座獲得の目も

予定通りのピットインのタイミングに合わせ、スリックからレインへの交換を行ったのが、36号車「PETRONAS TEAM TOM'S」(アンドレ・ロッテラー→脇阪寿一)と、38号車「ZENT CERMO SC430」(リチャード・ライアン→立川祐路)の王座争いに絡む2台。特に38号車の躍進は凄まじく、予選15位から32周目には4位に浮上、35周目には3位、48周目には遂に2位となる。その時点で、23号車は12位。38号車が12号車を抜くには難しいギャップだったが、万が一その12号車がリタイアしたら、17点差をひっくり返しての大逆転王座の可能性も見えてきた。

しかし、日産陣営も12号車の脱落は「GT-R」のデビューイヤーでの王座獲得という公約を果たせないことにつながるので、何が何でも12号車を優勝させる腹づもり。12号車は33周目のルーティンのピットインで、松田からフィリップへの交代と、レインへの交換を行い、トップのまま復帰させる。また、ヘビーウェイトを積む23号車の本山も、終盤に入って奮戦し、59周目に10位、62周目には9位に浮上。これで、12号車がリタイアして38号車が優勝しても、23号車も8位になるので王座獲得なるという計算だ。結局、12号車が姿を消すことはなく、ガッチリ走り切って今季2勝目を上げ、38号車の大逆転王座獲得の望みを打ち砕いた。3位には6号車「ENEOS SC430」(伊藤大輔/ビヨン・ビルドハイム組)が入っている。

後半担当の立川にスイッチしてから猛チャージをかけてきた38号車

自力で得点圏内に上がってきた23号車

表彰台の様子

シャンパンファイト