出荷状態でも失敗しやすいシーンを自動認識
――標準状態でどこまでシーンを認識するんでしょうか?
今村「自動認識する機能は『押すだけ夜景』と『押すだけ逆光』、『オートベストショット』と呼んでいます。通常はこうしたシーンを撮るためには、『シーンモードを選んでください』とか、『ダイヤルを回してください』となるんですけど、先ほどお話ししたように買ってきてシャッターを押すだけで撮れなければダメなんです。だから、買ってきた状態でさまざまな撮影シーンに対応するというところがEX-Z300の特徴になります。
『押すだけ夜景』は、夜景や夜景ポートレートをきれいに撮る機能です。他メーカーを含めて一般的なコンパクトデジタルカメラで夜景ポートレートをフラッシュをたいて撮ると、人物には光が当たっても背景は暗くなってしまいます。そこで、まずEX-Z300は自動で夜景だと判定します。次に、カメラが三脚に載っているかを認識します。三脚に載っていれば背景はブレないので、その場合は感度を上げないで、スローシンクロで撮影します。でも、コンパクトカメラのお客様で毎日三脚を一緒にお持ちの方なんてまずいないですよね。主役はあくまで手持ちなんです。そこで、ジャイロ信号を参考にして、手持ちで撮っていそうだという場合には、ありとあらゆる手段を使います。
フラッシュ調光もしますが、そのままでは背景が暗くなってしまいます。そこで、露光時間を長くしたり、感度を上げたりするほか、専用のライティング調整と暗部階調補正も行います。そのときにシャッター速度は、約1/8秒まで遅くなるのでそこでは手ブレ補正も使います。エクシリムエンジン3.0になって、ノイズリダクションの性能も大幅に向上しましたので、解像度を保ったままかなりノイズを減らすことができるようになりました。単一の技術ではなく、いくつかの技術の総合性能で、次元の高いところでバランスがとれるように作っています。
もうひとつの『押すだけ逆光』というのも、買ってきた状態でちゃんとした絵が撮影できるのが特徴になります。これまではどうしてもメニュー操作が必要だったり、処理時間がかかってしまったりするものが大方だったのですが、EX-Z300の場合はエンジンをリニューアルしたことによって、逆光処理も高速にできます」
ユーザーの不満を解消するカメラ作りへ
――この先の方向性などを教えていただけますか?
今村「いろいろ計画はありますが、まだ企業秘密ですね(笑)。ただ、お客様に負担をかけないようなカメラで、『どうだ、すごいだろう』っていうのはもちろん作れると思います。でも、ただすごいだけだと、結局使っていただけなくなってしまいます。『何も考えずに撮るだけで本当にいい絵が撮れるようになったね』と言っていただけるのが一番なんです。
今のデジタルカメラは確かに80点くらいまでは来たような気がしますが、それでも漠然と不満を抱えていらっしゃるお客様がたくさんいらっしゃいます。画像が汚いということなのかもしれないし、思ったような絵が撮れないということかもしれません。そういった、本当は不満に思っていても声に出せないままになっている部分をできるだけ掘り起こして、お客様が満足できる形で解決していきたいと思っています」
――本日はありがとうございました。