薄型コンパクトデジタルカメラの現在のトレンドは顔認識機能だ。カシオが8月に発売した「EXILIM ZOOM EX-Z300」(以下、EX-Z300)は、認識した人物の肌をまるでメイクアップしたかのように美しく写す機能を搭載する。そのほか、出荷時の状態で逆光や夜景などの失敗しやすいシーンでも、カメラがシーンを自動認識してきれいな写真を撮影可能だ。そんなEX-Z300開発者の方にお話を伺った。

EXILIM ZOOM EX-Z300。カラーは、ピンクゴールド、シルバー、ブラックの3色

エクシリムエンジン3.0によって新機能を実現

――まずEX-Z300の概要について教えていただけますか?

カシオ計算機 開発本部 QV統轄部 商品企画部 第二企画室 今村圭一氏

今村圭一(以下、今村)「EX-Z300では、昨今市場でトレンドになっている機能はひととおり押さえています。手ブレ補正ももちろん搭載されていますし、そういった面では非常にスタンダードなモデルになっています。また、価格帯的には若干上位のモデルになりますので、液晶も3インチの高精細なものを搭載するなど低価格なモデルよりも高級感のあるものに仕上げています。従来機から刷新された中で、一番の特長は画像処理エンジンにリニューアルされた『エクシリムエンジン3.0』を採用したことで、それによって『メイクアップ機能』などいくつかの新しい機能が実現されています」

――コンパクトデジタルカメラに必須機能が多くなって、独自色が出しにくくなっていると思いますが。

今村「大きく分けてカメラの開発はふたつの考え方をしています。ひとつは、比較的長いスパンでデジタルカメラは今後どうなっていくんだろうという長期的な視野に立った考えです。デジタルカメラ市場は熟成してきたとは言われていますが、我々はデジタルカメラはまだ始まったばかりで、この先にまださまざま技術革新が起こっていくと思っていますし、これで完結した姿だとは捉えていません。ですから、将来的にどういう姿になっていなければいけないという、長期的な視野に立った考え方が必要なのです。

もうひとつは、もう少し短いスパンでどういった機能を追加すれば市場でお客様に認知していただけるかと常日頃から考えています。しかし、各メーカーとも求める機能性などが非常に似通ってきていて独自色が非常に出しにくくなっています。また、ソフトウェアでの工夫というのはどうしても追従されがちで、我々自身もどういったところで独自色を出していくのかは非常に悩ましい部分でもあります。今回はカメラ作りをするにあたって、より本質的なところ、実際にお客様に使っていただいてどういった点が不満点になっているのかをもう一度考えてみました。

EX-Z300背面。出荷状態でも夜景や逆光がきれいに撮れるほか、「オートベストショット」などさまざまなシーンモードも用意される

たとえば、一般的に多くのお客様はわざわざ夜景モードを選んだりせずにそのまま夜景にカメラを向け、どんなに遠景でもフラッシュをたいてしまって、暗い画像しか写らなかったりブレたりしていたわけです。でも、本来はカメラを買ってきて撮っただけで、ある程度のものは撮れなければいけないんです。逆光補正という機能も、各メーカーのデジタルカメラに搭載されていますが、もう少し突っ込んで、複雑な撮影の設定なしでも、買ってきたままの状態でそういったシーンでも失敗なく撮れるカメラを作ろうというのが、このカメラのコンセプトになっています。

また、人物の顔をきれいに撮るというのが非常に本質的な機能なのではないかということで、人物の顔をきれいに撮るために開発を進めていったのが新たに搭載された『メイクアップ機能』です」……続きを読む