「MacBook Pro」と「MacBook」が新世代に移行した。発表イベントでSteve Jobs氏が特にアピールしたのは、アルミ製のユニボディとパフォーマンスに優れた統合型グラフィックス。両製品はLEDディスプレイや新マルチタッチトラックパッドなど数々の最新技術も備える。本稿では、そのイベントの模様をお伝えする。
「MacBook Pro」と「MacBook」が新世代に移行 |
健康問題がニュースで取り上げられているSteve Jobs CEO。Q&Aセッションに移る前に、「必ずつっこまれるので、先に言っておくと……」と、この日の血圧を公表 |
Windows VistaのつまづきがMacの追い風に
過去1年間のSteve Jobs氏(Apple CEO)の基調講演の内容をふり返ってみると、今年9月のスペシャルイベントがiPod新製品発表、6月のWWDCは「iPhone 3G」、3月のスペシャルイベントが「iPhone SDK」。1月のMacworldは「iTunes Movie Rentals」と「Apple TV」 Take 2、そして「MacBook Air」だった。
「Apple Computer」から「Apple」に社名が変わったとはいえ、2007年8月のiMac発表以来、1年以上も既存のMac製品が基調講演で語られていない。そんな状況をさみしく思っていたMacユーザーは多かったと思う。Appleも、それは分かっていたのだろう。同社が久しぶりにMacを主役に据えたスペシャルイベントのタイトルは「The spotlight turns to notebooks」 (ノートブックに脚光を)である。いつもは遠回しな表現のタイトルにするのに、今回はそのものズバリ。これで期待するなといわれても、それは無理な相談である。
ステージに登場したJobs氏は、改めて今回がノートブック製品のスペシャルイベントであると告げると、最初にMacの現状 (State of the Mac)を説明するとして、チーフオペレーティングオフィサーのTim Cook氏にバトンタッチした。
久しくMacに大きな動きがなかったものの、過去数年のMacの売上げは好調だった。米国においては、ここ数四半期続けてパソコン市場全体を2~3倍上回る伸びで市場を広げてきた。2008年度第3四半期(08年4月~6月)には250万台近いMacを売り上げた。ユニットベースの小売市場シェアは17.6%。低価格パソコンに注目が集まるが、「われわれは品質に妥協しない」とCook氏。それでもハードウエアとソフトウエアの統合的なシステムが受け入れられて売上高ベースでは31.3%のシェアを獲得している。米国のパソコン小売りでは3ドルに1ドルがMacに費やされている計算だ。しかも、Apple StoreでMacを購入する人たちの50%以上が初めてMacに触れるスイッチャーである状態が、今でも続いているという。
米国におけるMacの市場シェア。ユニットベースで17.6%、売上高ベースでは31.3%になる |
過去3年間Macのユニット販売数は順調な伸びを記録してきた。今年度も第3四半期終了時点で2007年度分に達した |
教育分野での伸びも好材料となっている。米国では39%のユニットシェアで、Dellを抑えてトップを維持。主要大学では47%を獲得している。このような学生は卒業後もMacを使い続ける可能性が高く、教育市場への浸透はMacのさらなる伸びを期待させるデータになっている。
今日のMacの成長を支えるポイントとしてCook氏は「優れたコンピュータ」「優れたソフトウエア」「互換性」「Vista」「マーケティング」「リテールストア」の6つを挙げた。互換性というのは、MacのIntelプロセッサ採用で実現したWindowsのデュアルブートや仮想動作である。スイッチャーの不安を解消する保険のような効果になっている。"Vista"は、Windows Vistaのつまづきを意味する。Peter Barrows氏がBusiness Weekに寄稿した記事から「Vistaは、"大失敗"としてテック業界の歴史に刻まれる可能性がある」という一文を引用しながら、ライバルへの逆風がMacへの追い風になっている点を説明した。
ノートブックはパソコン製品の中でも世界的に成長しているカテゴリだ。今回Appleが発表する新製品は、数年前の一桁台状態から17.6%までに伸びてきたMacのシェアを、20%、さらにその先に拡大する戦略的な基盤となる。