青少年ネット規制法議論の内幕披露
シンポジウムでは、「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」で開発した「双方向利用型サイトの利用リスク評価モデル」と、ヤフーとネットスターが開発した「インターネット利用リスク教育 保護者向けモデル教材」について報告があった後、パネルディスカッションが行われた。
パネリストとして、今年6月に成立した「青少年ネット規制法」の立法に関わった、民主党衆議院議員の玄葉光一郎氏、同じく同法に関わった自民党衆議院議員の葉梨康弘氏、全国PTA連合会会長の高橋正夫氏、研究会メンバーで品川女子学院校長の漆紫穂子氏、ヤフーCCO兼法務本部長の別所直哉氏、マイクロソフト最高技術責任者補佐の楠正憲氏、基調講演を行った下田氏、お茶の水女子大学の坂元氏の8人が参加した。
玄葉氏は、同氏が衆議院の青少年特別委員長だった時、大人の知らないところで、ネット利用が原因となり多くの子どもが被害を受ける実態を放置できないと実感。このことが青少年ネット規制法制定の動機となったと説明した。さらに、有害情報の判断を誰が行うのかについて自民党と意見が分かれながらも、制定にこぎつけた過程を述べた。
これに対し、葉梨氏も、「警察庁にいたころから有害図書の問題などに関わってきたが、法律の実効性がなかなか上がらなかったという経験がある」と、青少年の有害情報問題に関わってきたと説明。
今回の青少年ネット規制法については、「自民党の議論は最初は理念に流れすぎた。フィルタリングは万能でなく、子どもの発達段階によっても異なるフィルタリングの在り方があるはず。完全に子どもをネットから隔離するのはどうかとの思いもあり、自民党内の議論を徐々に常識的な方向に修正していった」と党内議論の内幕を披露した。
有害情報の範囲を決めるのは「親」
マイクロソフトの楠木氏も、「有害情報が何かというのは、国が決めるべきではなく、本来親が決めていくべき。ペアレンタルコントロールについても、民間がもっと自主的に対応していくべきものではないか」と述べた。
一方、実際に教育の現場にいる品川女子学院の漆氏は、「子ども達はノートにいたずら書きする感覚でプロフやSNSに自分のプロフィールを書き込むが、ネットの世界はノートと違い、『(伝達スピードが)速い』『(伝達範囲が)広い』『(書き込んだものが)消えない』などの特性がある。一旦書き込まれれば『コピー&ペースト』で際限なく広がるが、それを消すための法整備が遅れている」と問題点を指摘した。
お茶の水女子大学の坂元氏は、基調講演で下田氏も述べた「ダイレクトコミュニケーション」の問題を指摘。「昔は変な人から電話があっても、親の段階で取り次がないなど、大人がフィルタリング機能を果たしていた」。
「だが今では、携帯電話でダイレクトにつながってしまい、大人がフィルターとして機能していない。これは人の問題だけでなく、情報をどう扱うかの問題でもあり、歴史上初めてのことではないか」と現在の状況に危機感を表明した。