「ネットいじめ」が最も深刻、制度的支援は"皆無"
学校では、学校裏サイト、プロフ、メールなどが原因と見られる非行や逸脱行為、授業妨害などが発生しているが、「最も深刻なのがネットいじめ」(下田氏)。「ネットいじめは警察に相談すればいいというわけにはいかず、学校が引き受けざるをえなくなっている」。
下田氏は、「ネットで子どもが傷つけあうという環境は10年前にはなかった状態。だが、教員の能力不足、法規制の遅れなどもあって解決が非常に難しい。教員から『ネットいじめをなくすにはどうすればいいか』と聞かれても、回答が難しい状況だ」と述べた。
そこで下田氏が提案するのが、親が子どものネット利用を管理する「ペアレンタルコントロール」だ。同氏は「親の能力が解決の糸口」と述べる一方、「制度的な支援は皆無」と指摘。
下田氏は、制度的支援に代わりうる、親の能力向上のために自身が行っている活動を紹介。2005年4月から、群馬県で子どものネット利用法を保護者に教える市民インストラクター養成講座を実施。さらに、2008年8月から、「CISS」と呼ばれる市民活動支援システムを立ち上げた。
同システムでは「知った人から知らない人へ」「消費者の視点からの情報共有」「地域における継続的学習、能力向上」「子どもの情報教育、情報価値判断能力の育成」などをテーマに、保護者の啓発活動に取り組んでいる。
ネットは「思春期に禁止されてきた全てが手に入る」
また、2004年4月からは、FM群馬の番組「Teens Express」の制作に協力、大きな反響を呼んだ。シンポジウム会場でも、実際に番組として放送された、群馬県の駅前で女子学生に聞いた出会い系サイトを利用した援助交際の実態が放送され、あまりの内容に会場が静まり返った。
下田氏は、「ネットでは犯罪者がダイレクトに子どもにアクセスできるのが大きな問題。FM群馬での放送は県民に大きな衝撃を与えた。警察に任せておけばいいというものではなく、そのために市民活動を行っている」と述べた。
また、「インターネットは、どんな危険物でも入手できる最強のメディア。ネットが登場するまで、思春期に禁止されていたものが、全てネットで手に入るようになっている」と強調。
「テレビや新聞のように責任を負うことのできるメディア主体がある場合は受信者責任という考えも有効だが、インターネットには有効ではない。これに対処するには、家庭と学校のコラボレーションが大切で、それをCISSなどのシステムで支援していく必要がある」と訴えた。