電波時計を第三世代へと進化させたカシオ
カシオでは12日、東京・初台の本社ビル内で秋冬の新商品発表会を開いた。会場に入ると、まず「タフムーブメント」の大きな文字が目に飛び込んできた。今シーズンの目玉は、何といっても第三世代電波ソーラームーブメント「タフムーブメント」だ。電波時計をリードしてきた同社が、新たな世界標準として放った新世代ムーブメント。世界6局の標準電波を受信し時刻を自動修正する「マルチバンド6」、わずかな光でも動力に変える大容量ソーラー充電システム「タフソーラー」、G-SHOCKで培った耐衝撃技術を活かし、ムーブメント自体の耐久性を向上した「ハイブリッドマウント構造」、さらに万一の針ズレに対しても自動的に位置を補正する「針位置自動補正機能」といった先進テクノロジーに対応する。「世界最小」で女性用電波時計に攻勢をかけるシチズンに対し、先進技術の開発にいち早く取り組んできた同社が、「世界最先端技術」で男性用電波時計を一歩リードした形だ。
カシオブース |
そんなタフムーブメントを搭載して11月下旬から発売されるのが、最上級ブランド「OCEANUS(オシアナス)」新モデルだ。スリムなスタイルで上質感を追求したプレミアムライン「OCEANUS Manta(オシアナス マンタ)」と、デザインと機能が巧みに調和したクラシックラインの2シリーズ8機種に搭載される。中でも「マンタ」は、厚さ10.5mmのスリムボディに、タフムーブメントの各機能に加えて、5モーター駆動の多機能クロノグラフ、ワールドタイム表示、ストップウオッチなど多彩な機能を備える。デザイン面でも、随所に質の高い精緻な処理を施して仕上げられた。オシアナスの洗練された造形美が、タフムーブメント搭載によりさらに信頼性を高めて進化したといえる。
タフムーブメントは大人向けのG-SHOCKシリーズである「MR-G」、「MT-G」、「GIES」にも搭載されるが、何といっても見逃せないのはタフムーブメントを搭載したG-SHOCK最高峰モデルの登場だ。公式発表前のため、この件もまた詳細はオフレコだが、特別に少しだけ"漏洩"しよう。素材はチタン、その上からキズがつきにくい特殊なコーティングを施した。素材、造形、機能、すべてにこだわった結果、価格は破格になっている。だが、その値段でも実はコストは合わないという。最上のG-SHOCKを創るためにはどうすればよいか、制約を設けず開発した結果、この数字になったという。セイコーやオリエントの機械式時計で見せられた職人技の世界が、カシオという先端技術メーカーでも根付きはじめていることに嬉しくなった。
厚さ10.5mmというスリムボディを実現した「OCEANUS」新モデル |
男性用のイメージが強いカシオだが、土屋アンナをイメージキャラクターに起用した女性用の「G-ms」と「Baby-G」も好調だ。「タフ&エレガンス」というカシオだからこそ可能となったコンセプトが、時代のニーズにもマッチして若い女性に受けている。とくに「Baby-G」では、これまでにないカラー展開でトレンド感を演出。「東京ガールズコレクション」へ参加するなどの話題作りも欠かさない。G-SHOCKでもスポーツシーンなどを意識したこれまでにないカラーバリエーションを充実させている。クラブイベントなどでの情報発信も行なっていくそうだ。
4メーカーを巡った秋冬の新商品発表会。おもしろいことにソーラー電波時計の最先端技術と機械式時計の職人技という両極端の世界を見せつけられた。だが「自分たちにしかできない独自技術で、世界と戦う」という思いは、表現こそ違えどのメーカーも同じだ。「世界最小ムーブメント発表」という打上げ花火で始まった今年の秋冬新商品の発表。新技術が新商品を生み、しばらく大きな動きがなかった電波時計にも、男女用ともに次世代の到来を感じさせる新しい革新にふれることができた。カシオ、シチズンによる新ムーブメント開発とともに、電波時計は新時代に入った。そんな思いを強くした今回の発表会巡りだった。