最優秀賞(Best of Show)「Oktapodi」~タコのアクションラブストーリー
水槽の中で愛し合う二匹のタコ。しかし、彼らは実は鮮魚店の売り物。早速シーフード店の買い付け人がおいしそうな彼女を買い付けて持ち帰ろうとする。買い付け人が三輪トラックで走り去ろうとした、そのとき(今までなんでそうしなかったんだというつっこみはおいておいて)、我らがヒーロータコは水槽から飛び出してトラックを追跡するのだった。
ピクサーの「ファインディング・ニモ」の父子愛のメインストーリーを恋人同士に置き換えてストーリーをギュギュっと要約したような作品。地中海地方を彷彿させる陽光の眩しい白い町並みの中をオレンジとピンクの雄雌のタコが暴れ回る様は、見た目にも艶やか。実物はあまり可愛いとはいいにくいタコを、コミカルに愛らしくも感情豊かに動かすテクニックには並みならぬセンスの良さを感じる。本作はストーリーも詰め込みすぎず欲張らずにショートにまとめる潔さもお見事で、来場者から最も高く支持されたことから、最優秀賞を獲得した。
なお、驚くべきは、この作品は、フランスのアニメーション専門学校の名門「ゴブラン」の三年生の学生チームによって制作されたという事実。オフィシャルサイトにはメイキング映像と設定資料が開示されているので、興味のある人は見てみよう。
まとめ
今年は入選こそしなかったが、日本の出品作もそれなりに目立ち、さらにはゲーム関連映像も上映会場では人気を博していたように思う。
今年の傾向として感じたのはヨーロッパ勢の優秀作品が目立ったことと、これだけGPUがハイスペックになっているのもにかかわらず、リアルタイムレンダリング作品が少なかったことだ。是非とも来年はリアルタイム作品で入賞を狙って欲しいものだ。
なお、受賞作が、例年までの暗いアーティスティック志向の強い作品とは対照的な、明るく楽しげな作品群に与えられたのは、来場者投票システムが功を奏した結果といえるかも知れない。
来年のSIGGRAPHのCAFも今から楽しみだ。
(トライゼット西川善司)