福岡県知事 麻生渡氏

「世界最大・最先端のRubyビジネス拠点を構築する」――こんなかけ声の下、福岡県で8月4日、「福岡Rubyビジネス拠点推進会議(F-Ruby)」が産声をあげた。プログラミング言語「Ruby」で福岡県のソフトウェア産業を活性化させようというもので、産官学が一体となり、ビジネスの視点からRubyを活用していく。

F-Rubyは、福岡県知事の麻生渡氏を名誉会長とする福岡県の産業活性化の取り組みで、福岡県商工部商工政策課に事務局を置く。地元企業を中心に124社が参加するかたちで発足した。

なぜRuby?

Rubyについては、ここで紹介するまでもないだろう。まつもとゆきひろ氏が開発し、1995年に発表したプログラミング言語で、コーディング量が少なくて済み、開発生産性が高いという特徴を備える。2004年にデンマーク人のDavid Heinemeier Hansson氏がフレームワーク「Ruby on Rails」を公開して以来、世界的に注目を集めるようになった。

これまでソフトウェアの開発は米国・欧州が主体だったが、Rubyは日本で生まれた国産技術。Rubyそのものの特徴に加え、開発者にとっては、最新の技術情報が日本語で入手できるというメリットもある。

はじまりはRubyビジネス・コモンズの成功

F-Rubyは、今年3月に福岡県が策定した「新ふくおかIT戦略」に基づくものだ。この中で福岡県は、Rubyを核としてソフトウェア開発の世界的拠点を目指すことを目標の1つに掲げている。

Rubyを産業活性化に活用するという流れは必ずしも新しいものではない。すでに、まつもと氏の拠点である島根県や、東京都三鷹市などで、自治体として技術者を養成したり事業を支援したりしていこうという動きがある。このような全国的な盛り上がりも、福岡県がRubyの活用を推進するきっかけの1つになっているようだ。

また、今回のF-Ruby立ち上げに至った大きな要因の1つとして、2007年7月に福岡県に設立されたRubyコミュニティ「Rubyビジネス・コモンズ(RBC)」の活発な活動も挙げられる。

イーシー・ワン代表取締役社長の最首英裕氏

Rubyビジネス・コモンズは、Rubyをビジネスに利用するための知識を共有することを目的に、イーシー・ワン代表取締役社長の最首英裕氏が設立したRubyコミュニティだ。設立から1年で会員数は500人以上に達し、日本最大のRubyコミュニティにまで成長した。毎月勉強会を開催するなど、精力的に活動を続けている。

このようなRubyビジネス・コモンズの成功を受け、「県としても支援していこう」と設立されたのがF-Rubyだ。Rubyがビジネスで利用される事例が出てきているいまこそ名乗りをあげよう、と県も積極的にこの案件に乗り出した。

設立総会で挨拶をした麻生知事は、「Rubyビジネス・コモンズが個人の研究を支援する活動であれば、F-Rubyは企業として発展する部分を支援していくもの」と位置づけを説明。そのうえで、「Rubyビジネス・コモンズとF-Rubyが両輪となって、Rubyを使ったビジネスの拠点を福岡県に形成していきたい」と設立の意図を明らかにした。