トランスコードは現行最強CPUより速い

──アップコンバートのほかにも、SpursEngineで実現した機能はたくさんありますね。これも当初の計画どおりですか?

的場 そうですね。代表取締役の西田から「毎年10個以上のアプリを作り、可能性を見せなさい」という指令が下りまして(笑)。それを目標にしています。なので、今後も増やしていく予定です。弊社の開発チームは100人を超えますが、そのなかからPCや半導体の技術者、映像処理系のアルゴリズムを開発している研究者などが集まって、SpursEngineでどんなものが作れるかという話し合いから始めたんです。このため、開発の途中で消えたアプリケーションもさくさんあります。

──機能の追加については、ファームウェアのアップデートで対応するのですか?

的場 それはマーケティングと相談しながらやっていくことになると思います。ただ、パフォーマンスとの関係が出てきますので、次世代以降の機種に搭載されるものも出てくるでしょう。

──では、数ある新機能のうち、アップコンバート以外で、特に他社製品と比較してほしいものを教えてください。「ここを比べたら、絶対違いが分かる」という点を。

的場 一番比べやすいのは、ビデオカメラ動画の編集時ですね。現在、多くのメーカーがAVCHD形式のHDビデオカメラを投入しています。その録画データをPCに取り込んで編集し、ビットレートを変換してDVDに焼くという作業をすると、普通は非常に時間がかかります。しかし、Qosmio G50なら、公称で2倍の速さで処理できます。動画形式の変換作業だけなら、10倍の速さですから。しかも、CPUの負荷が低いので、他の作業と併行できます。

──トランスコード時、実際のCPU負荷はどれくらいなんですか?

的場 若干波がありますけど、CPU使用率はだいたい30%以下になるようにしています。3割程度の負荷であれば、別の作業も快適にできるだろうと考え、目標値にしました。7~8割になると段々動作が重くなりますからね。今までのPCで同様の処理をすると、100%近い使用率になってしまいます。それではほかのソフトを起動して使うのは厳しい。

根岸 お客様の色々な声を聞くと、「今のパソコンは処理が遅くて、ビデオカメラの編集は現実的にはできない」という意見が非常に多かったんです。そういう方にも、是非Qosmio G50を試してほしいと思いますね。断然快適ですから。

──たしかに、本格的な動画編集をするなら、高価なデスクトップPCを購入するというのが常識だったりします。Qosmio G50なら、ノートPCでもそれに匹敵する性能が出せるわけですね。

根岸 いや、処理としてはもっと早いと思います。トランスコードに関していえば、現在あるもっとも高性能なCPUよりもさらに高速ですから。

的場 トランスコード処理は、SpursEngine内に専用ハードを用意しているので、PC全体としては低負荷ながら速いですよ。

将来の進化が期待される「ハンドジェスチャリモコン」

番組中の顔からインデックスを作る「顔deナビ」

──では、その他のSpursEngineが実現した機能についてお聞きします。出演者の顔で録画データのインデックスを作る「顔deナビ」ですが、どんな処理を行っているのですか?

根岸 地デジの番組を録画すると、同時にSpursEngineが映像の中に出てくる顔を検出して、インデックスを作成していきます。また、併行して、歓声や番組の盛り上がりを検出したり、CMと番組のゾーンを区分けしたりして、「顔deナビ」のタイムバー上に棒グラフも作ります。このグラフから観たいシーンを探すことも可能です。

──それらのインデックスは自動的に作られるんですか?

根岸 自動的ですね。ただ、予約のときにインデックス作成の有無が選べるので、不要でしたら機能を外すこともできます。そういった場合もあとから「顔deナビ」インデックスを作成できます。たとえば1時間の番組なら15分くらいですね。

離れた場所から手の動きだけでPCを操作する「ハンドジェスチャリモコン」

──次は、Webカメラに映った手の平の動作でPCが操れる「ハンドジェスチャリモコン」について。これを搭載したきっかけを教えてください。

的場 「Webカメラを使った面白いアプリケーションはないか?」というところからスタートしました。弊社の場合、開発センターがジェスチャーに関する研究を続けていたので、すぐにハンドジェスチャリモコンの構想が上がりましたね。今までのPCでジェスチャー認識を行うと、CPU負荷が100%近くになりましたが、SpursEngineを利用すれば、現実的に組み込めるだろうと。そこで、手のジェスチャーがどういうときに役立つかを考えて、主にAV鑑賞時の操作に使うという現在のカタチにしました。こういうアプリケーションはどこまで使って頂けるかという点が重要になるので、手の平を見せたら再生が停止するなど、誰でもすんなり使えるように工夫しました。ただ、まだ未完成で、これから色々な進化をしなければならない技術だと思っています。いつかは離れたところからPCの電源も落として、フタも閉められればいいなと(笑)。最終的にはAVだけでなく、他の用途にも使えるようになるのではと期待しています。

──今後が楽しみですね。ちなみに、現在はPCからどの程度の距離を想定していますか?

的場 3メートル程度の距離が一番使いやすいかもしれないですね。それ以上離れると、Webカメラの解像度の問題で認識できない場合が増えますから。逆に、近すぎるとわざわざジェスチャーするのも面倒ですしね。