――日本の怪獣特撮作品には、伝統的に手作りの良さがありましたね。
「円谷プロの伝統みたいなものの流れはもう、一回終わったと思うんです。だから昔の『ゴジラ』『ウルトラマン』で育った技術の人たちが作ってきたものが、だんだん薄まってきちゃったと思うんですよね」
――それを取り戻したいと……。
「『ウルトラセブン』とか『妖星ゴラス』の特撮が一番贅沢で、おもしろいなって。だから、それもう一回やればいいじゃないかと思うんですけどね。それは通にしか分からないことじゃないですか。粋な人じゃないと」
――その監督からご覧になって、最近の怪獣特撮作品には、どのような印象をおもちですか?
「結局のところ、平成『ウルトラマン』でも、ものすごいでかい怪獣が出てきてさ、ウルトラマンがハエみたいに……。あんなの観たくないんだよ、オレは(笑)。ああいうことやるぐらいだったら、バトルのおもしろさを追求してほしいんですよ」
――それは劇場公開作品でも、同様のことが言えるんでしょうか?
「ぶっちゃけ、『ゴジラ』も『ガメラ』も興行的には振るわなかったじゃないですか。それはしょうがないんですよ。結局、おっさんたちはね、怪獣みんな好きで観たいんだけど……」
――それは、時代が大きく変わったということなんでしょうか?
「最後は『とっとこハム太郎』の併映ならやらせてやるぞ、みたいな。"愛と夢と冒険の怪獣映画"みたいな。そんなの誰も観たくないんですよ。北村龍平ちゃんの『ゴジラ FINAL WARS』も、ああいうことになっちゃってさ。まあ、怪獣映画ってものが非常にバカにされてる時代だからね(笑)」
――海外でも、怪獣映画は作られていますが……。
「洋物の『クローバーフィールド』みたいにね、何十億円もかけた怪獣映画、確かにおもしろいけど、あれでいいのかっていう。日本人にとってね。オレはもう怪獣映画は進歩しなくていいと思うんだよね」
――すると、いわゆる特撮の技法のみで、CGは使わないでおやりになるんですか?
「CG使うんですよ、結局はね。ただ、使い方の問題でね。フルCGになったらゲームと変わんないじゃないですか。結局、『大怪獣バトル ULTRA MONSTERS』が一番おもしろいんだということに気がついて。気がついたっていうか、あたりまえなんですけどね(笑)。円谷プロだって『大怪獣バトル』が一番おもしろいわけであってね。本編いらねえじゃん、ていうね。怪獣が闘ってりゃいいんだ、みたいなさ。その文化っていうのは、もう日本人の誇りなんでね。それを変えずにやるしかないんじゃないかっていう。伝統芸能の文化だから」
――伝統的に培われてきた日本の怪獣特撮作品と海外のSFX作品とは、別物だと……。
「全然違いますよ。ハリウッドの『GODZILLA』もね、ひどいなっていうさ(笑)。相変わらずひどい映画しか来ないな、っていう感想ですよ。気持ち悪い、向こうの怪獣は。文化の違いだから、しょうがないんだけどね」
――CGの比重が増すに連れ、確かにある種のリアリティといったものが薄れていく印象はありますね。
「結局、『スター・ウォーズ』がね、いくらすごいとか言ったってさ、結局1本目の酒場にいるやつが一番かわいいだけであって。まあ、ストーム・トルーパーとダース・ベイダーはかっこいいけどね。なんか、フルCGはちょっともう観る気がしないですよ。ここにいるんだな、っていう空気感がないしね」