次に、タブレットとしての機能を検証してみよう。PTB-TMW19Bには、専用のペンとスタンド、さらに取り替え用のペン先が付属している。ペンは高級感のある作りで、万年筆とまではいかなくても、高級ボールペンのような重さと触り心地だ。使用する電池は単4乾電池1本。ペンのオン/オフは、ボールペンのようなノック式のスイッチで切り替える。ペンにはさらに2つのボタンが用意されている。
文字の手書き入力をチェック
まずは、手書きのメモを作成してみよう。Windows Vistaには、標準でタブレットPC向けのソフトが用意されている(Home Editionを除く)。その中から、手書きメモ作成ツールである「Windowsジャーナル」を使ってみた。PTB-TMW19Bのペン入力読み取り速度は130pps。いったいどれだけのスピードなのかまったくイメージできないが、試しに文字を書いてみたところ、まったく遅れなく反応した。上下左右に素早く動かすと多少反応速度の遅れは感じるが、超高速筆記状態でもなければ問題ないだろう。
それよりも気になるのは、やはり液晶部分の角度。画面上部に書き込む際は若干腕を浮かせることになり、長時間使っていると腕が疲れてきてしまった。今回は自分の体から離して使っていたためそのような姿勢になったのだが、本格的に使うなら、液晶に覆いかぶさるような姿勢で、かつ腕を液晶に置いて使うべきだろう。
姿勢にさえ気を付ければ、タブレットでの操作はかなりオモシロい。文字の入力だけを考えればキーボードが断然速いのだが、一部のメニュー操作やドラッグによるオブジェクトの操作などでは、マウスに持ち換える手間がない分、作業をスムーズに進められる。書体の大小も、ペンで文字を大きく書くだけ。線やイラストも手軽に描ける。
まあ、筆者も含めて人によっては字がキタナイのはしょーがないが、メモを作るならタブレットは最適だ。何より、実際に文字を手で書くことによって、イメージとして頭の中に強く残る気がする。
Windowsジャーナルでの作成例。右下の製品イメージは、Windows Vistaのタブレット機能の1つ「スナイピングツール」を使って、メーカーサイトからイメージの一部をコピーした |
ペン操作なら、漠然としたアイデアを感覚的にまとめられる。手書きの文字をOCRのように読み込み、テキスト化することも可能 |
バンドルソフトとして、デスクトップやパワーポイントなどのアプリ画面に直接手書き入力できる「Power Presenter RE」や、ワードなどのオフィス製品で文章を手書き入力できる「Office Ink」などが添付される。これらのソフトを使わずに、Windows Vistaの標準機能だけでも十分実用的に使えるハズ。
もちろんWindows上の一般的な操作も可能で、ペンを浮かせながら動かせばカーソルが移動し、画面をタップすればクリックとなる。ペン本体のボタンを押してからタップすると右クリックとなるなど、操作性は十分だ。ただ、マウスホイールに相当する機能がないのが残念。各ボタンの挙動はコントロールパネルで設定できるので、自分好みにカスタマイズするといいだろう。
イラストの手書き入力をチェック
絵心がないながらも、水墨画風を意識して描いたサンプル。押す力を調整すれば、ひと筆書きで葉の形を表現できる |
それでは、ペンタブレットを使ってイラストを描いてみよう。ペンタブレットの醍醐味は、なんといっても筆圧感知。マウスでは表現しにくい筆の強弱を手軽に加えられるのだ。ただし、筆圧感知機能を使うには、対応グラフィックツールが必要。ということで、今回はPhotoshopを使って実験した。
筆風のブラシを使い、押す力を変えながらテキトーに描いてみたところ、微妙なタッチまでしっかりと反映される。PTB-TMW19Bの筆圧感知レベルは1,024で、かなり細かな表現が可能だ。押す力を徐々に弱めながら描くことによって、筆のようなヌキや払いを表現できる。完璧に使いこなすには多少の慣れが必要だが、思い通りのイラストを描けるのは楽しい。
顔写真を普通紙に印刷し、ペンタブレット上でなぞり書きを行なって描いたイラスト。ちなみに、筆者の顔ではない |
次に、下絵を液晶ペンタブの上に置いて、なぞり書きを試してみた。プリンター用の普通紙の上から線をなぞって描いたところ、問題なく反映されている。ただし、多少強めに描かなければならず、場所によっては線が切れたりしてしまった。ケント紙でも試してみたが、強めに書いているにもかからわず、線が所々切れてしまった。ケント紙だと画面の明るさを上げても液晶の内容が見えないため、なぞり書きでは普通紙程度の厚みが限界なのかもしれない。
細いペン先ではジャギーが目立ってしまうため、ペン先を太くする必要がある。したがって、必然的にキャンバスのサイズも大きくなるので、ある程度のマシンパワーが必要だろう。とはいえ、今回検証に使用したPCはCPUがCore 2 Duoの1.8GHzで、メモリは1GB。800×600ドットのキャンバスならなんの支障もなく描けたので、そこそこのレベルでも十分であるといえる。
まとめ
今回のレビューで傾斜角以外に気になったのは、本体から発生される熱。液晶下部の銀色の部分が、使っているうちに熱を帯びてくるのだ。腕をべったり着けた状態だと、結構気になるかもしれない。しかし、やはりペンタブレットでの操作は未来を感じさせるオモシロさがあり、液晶で手元を確認できるのはかなり使いやすい。絵を描かない人にこの大きさと値段はツライかもしれないが、従来の液晶ペンタブの画面サイズの小ささに購入を迷っていた人になら検討する価値はあるだろう。
(高橋量 / デジタル・コンテンツ・パブリッシング)