ワイポウア森林保護区の魅力は、タネ・マフタだけではない。保護区内にはニュージーランドに残るカウリの木の1/3が生息し、森の中には樹齢2000年とタネ・マフタよりも古く、直径も5.2mと大きい"森の父"と呼ばれる巨木「テ・マツア・ナレ」や、「フォーシスターズ」と呼ばれる4本のカウリの木が寄り添う見どころもある。

森の中には看板があり、タネ・マフタやその他の見所を案内してくれる

(左)マオリ語で"森の父"を意味するテ・マツア・ナレ。現存するカウリの木の中で最も古く、最大の直径を持つ
(上)テ・マツア・ナレの周囲には、樹齢2000年の老木を守るように背の高い木々が立ち並んでいる

カウリの木の根元では、琥珀色の樹脂カウリ・ゴムの欠片を探してみるといいだろう。カウリの樹脂は、樹皮が損傷を受けたり、枝が折れたときに傷を塞ぐために自然に流れ出し、傷が癒えると地面に落ちるといわれている。樹脂が落ちていたら傷が癒えた証拠だ。

森の随所で見られる、無数に張り巡らされた木の根。太古から続く森の歴史を感じさせる

長い年月の間に侵食された木の根。木そのものは朽ち果てても、苔や草が寄生し、森の生命体を支えている

森の中は至るところにニュージーランドのシンボルである原生のシダが茂り、日本の森とは異なる太古の風景が見られる。シダは背の高いブラック・ファーン(黒シダ)など生長して木になるものを含め、200種類以上がこの森に生息しているという。ニュージーランドのロゴマークにもなっているシルバー・ファーン(銀シダ)は、葉の裏側が白く、月灯りを反射して銀に光る性質を持ち、マオリの人々が森の中に一枚ずつ落として道しるべとして用いていたそうだ。マオリは現代では都市生活を送る人がほとんどだが、かつて森の草木はほぼすべてが薬草や生活のために活用されており、今でも数種類はお茶や薬として利用されている。森の中を歩きながら、マオリの人々の森に生きる知恵を学んでみるのも面白い。

森の中で数多く見られるシダ。新芽のコルは、マオリ語で「新しい始まり」の意味

生長すると25mにも達するといわれる黒シダ。森の上を覆い、独特の木漏れ日を落とす

ワイポウア森林保護地区から車で1時間半足を延ばすと、4300万年前のカウリ・ゴムや、カウリの木を用いて造った家の復元や家具などが置かれた「カウリ博物館」がある。ワイポウア観光には欠かせない見どころのひとつであり、ニュージーランドの発展を支えてきたともいえるカウリの木について、より深く理解することができるだろう。

ワイポウアの南、マタコにあるカウリ博物館。カウリで作られた家具などが展示されている

昆虫が埋まったカウリ・ゴムの結晶。カウリ博物館では、4300万年前のカウリ・ゴムも展示されている