日本初の世界遺産というだけでなく、エコツーリズムのブームに乗ってか、昨今、さらに人気が高まりつつある屋久島。屋久島に自生する樹齢7200年、太古の時代から神木として崇められてきた縄文杉は、神々しく圧倒的で、見る者を虜にせずにいられない。この屋久島の縄文杉との様々な類似点から、現在、環境保護活動などで情報交換を進める計画がある神木がある。ニュージーランドのワイポウア森林保護区にあるカウリの巨木「タネ・マフタ」だ。

ワイポウア森林保護区にあるカウリの巨木、タネ・マフタ。マオリ語で「森の神」の意味を持つ

ワイポウア森林保護区とカウリの木々

ワイポウア森林保護区はニュージーランドの北部、ノースランド地方にあり、オークランドから車で約4時間40分を要する。アクセスは決していいとはいえないが、近年、日本人観光客も数多く訪れるようになったニュージーランドの名所のひとつだ。カウリはその起源を1億9000万年前のジュラ紀に持つ、世界で最も古い広葉樹であり、かつて北島北部の広範囲にわたって生息していたニュージーランド原生の木である。成長すると巨木になり、かつては記録にあるものだけでも直径8.5mや7m以上のものが何本も存在していたという。

硬く丈夫で、年月を経てもゆがみや収縮のないカウリの材質は、造船や家具、金属の鋳型など幅広い用途に適している。また、古くからマオリの人々が料理の点火や魚を招き寄せるための松明、族長など身分の高い者が顔に施す入れ墨用の顔料といった用いた貴重な資源であり、ヨーロッパからの移住者たちにもニスや絵の具、アクセサリーとして重宝された。

だが、そんな好材質のカウリは1769年のイギリス人のジェームス・クックの上陸を機に、ヨーロッパから次々と訪れた入植者たちによってその多くが伐採された。このとき、国土全体の約70%を覆っていた原生林は23%まで激減し、ノースランドのカウリの森もかつての4%を留めるのみとなってしまった。だが1980年代からは環境保護活動が盛んになり、カウリの木も保護されるようになった。現存するカウリの木で最も巨大なのが、ニュージーランドの先住民族・マオリの人々が「森の神」と崇める神木、タネ・マフタだ。

ワイポウア森林保護区にある、ホキアンガ地方の海岸。マオリが最初にニュージーランドに辿り着いた地といわれている