「監督として満足度の高い作品です」
今作の『L』は、『デスノート』2部作とは違う新たな顔を見せる。部屋に閉じこもりキラと頭脳戦を繰り広げていたLが、今回の事件では、銃弾を避け自転車を漕ぎ旅をする。大切な他人の命を救うために、Lが自分のすべての力を出し切るのだ。Lの言動は、そのまま中田監督の想いでもある。
「この映画では、"みんなをなるべく死なせたくない"という思いがありました。『デスノート』の時は勿論、今回の事件にLが関わるまでは、いっぱい人が死んでいます。だけどLが主体的に関わってからは誰も死なないってことにしたかった。それをLがウィルス学者の松戸(平泉成)に言う"私には犠牲にしてきた命がある。だけど目の前にある命を、見捨てたくない"という台詞に託したんです。それは具体的には真希(福田麻由子)のことを指してますけど、やっぱりみんなを救おうとするわけです。だから今回のLは悪人であるテロリストの命さえも救おうとするんです」
そんな中田監督の想いは、映画のタイトルにも込められている。Lは「変えられない世界」を変えるために、全存在を賭けて行動するのだ。
「映画タイトルも撮影の時はまだ決まってなくて、編集中に出てきたアイディアなんです。Lの台詞の中に『どんな天才も一人では世界を変えられない』っていう言葉があって、それが、『L change the WorLd』という本作のタイトルなったんです」
Lが自身の肉体を酷使する本作では、『デスノート』2部作や、過去の中田作品では見られなかった大掛かりなアクションシーンも登場する。
「大爆発や銃撃戦といったアクションシーンは大変でしたね(笑)。自分にそぐわないものというか、自分が今までやってこなかった映像なので……。この映画では、Lの最期の23日間を描くというだけでなく、良質なハリウッド映画にあるようなハラハラドキドキ感を、アクションシークエンスを盛り込んで見せたいという意図があったんです。僕はわりと職人気質なので、ホラーだったら当然怖くします。今回は『アクションシークエンスもやれる限りやろう』と気合を入れて、実現しました」
『デスノート』とは違うLの姿に対して、観客からはどんな反応があったのだろうか?
「批判もありました。例えば原作のファンの感想で"面白かったけどニアが●●●だったのが許せない"とか、"えっ、彼がニアだったの?"とか。その驚きが良い方向に転ぶ場合もあると思うんです。そもそも最初から拒絶反応を起こして"『L』は観に行かない"って人もいたと思うんですよ。そういう人にこそ、今回DVDで観て欲しいと強く思います」
新しい姿を見せるLが活躍するこの映画に、中田監督は強い想い入れがあるようだ。
「『デスノート』と違う映画だけれども、それにあえて挑戦したんです。やっぱり『デスノート』の縮小再生産みたいな映画にはしたくなかったんです。『デスノート』で一番最期に微妙に微笑みながらLは死んでいきます。その満足気な『デスノート』の中のLの最期の微笑みに向けて作る映画にしたいと思ったし、その想いは果たしたと僕は思っています。僕自身、非常に満足度の高い作品です。ハートウォーミングな要素が強い作品になってますけど、そういうところを楽しんでもらいたい。ヒロイックに死んでいったLに対する強い想いを持ってる人たちには、"Lはこうなんだ"って先入観を少し抜いて観てもらえれば嬉しいですね」