それでも基本をスポーツに置くポジション設定

フェーザーに跨がった第一印象は、"けっこう大きいな"だった。幸い身長が180cm近くあるので足付き性はそれほど悪く感じない。両足はほぼかかとまで着く。大きさを感じた理由は幅の広いタンク、広めのハンドルなどによるものだろう……、と思ったが、後日、突出したミラーによる印象が大きいことに気付いた。試しにミラーをたたんで走ってみたら、びっくりするぐらいコンパクトなバイクに感じた。ライダーから遠くに位置するためミラーステーを伸ばさなければならないのはわかるが、いかんせん長い。すり抜けにもじゃまだ。これはメーカーもわかっているようで、ちゃんとハンドルマウントのミラーがオプションで用意されている。これに交換してもいいかもしれない。ノーマルのミラーの視認性は必要にして十分といったところ。高速でもブレはほとんど気にならないレベルだ。

ポジションは適度な前斜となり、長時間でも楽そうだ。シートも広く、ポジションの自由度も高い。タンクの幅やステップ幅も広めだ。ステップはもっと狭いほうが好みだが、太いタイヤとチェーンラインで決まってくるので致し方ないところ。広めのハンドルは、走り出したとたんに気にならなくなる。このハンドルのためにポジションはちょっと腕を広げた、フロント回りを抱えるような感じになる。これが実にコントロールの自由度の高いポジションのキーポイントになる。

ほとんどのバイクについて、最適な動きを与えられるポジションは限定されるものだ。スーパースポーツならちょっと腰を引いたあたりで素早くマシンを動かせるポイントを探ることが多いし、ネイキッドならどっしりと構えてちょっと遠いところからフロント回りを操作するのが普通だ。しかしフェーザーは違う。多少腰の位置を変えても、同じように、どのようにでもコントロールできる。

フェーザーはツーリング専用バイクでもなく、街乗り用バイクでもない。どんなシチュエーションにも応えるが、基本はスポーツバイクである。広めのタンクは直進時には少々じゃまくさいが、コーナーでハングオフのポジションを取ると太ももが広い面積でフィットする。上部のエッジもいざとなれば脚を引っかけるのにも使える。基本はスポーツバイクとしての成り立ちなのである。

サイドビュー。YZF-R1に比べてホイールベースが65mm長いが、その差の多くはスイングアームの長さ

タンクが盛り上がっているのでそうは見えないがシートは高め。YZF-R1よりは低い

フロントビュー。ミラーがずいぶん出っ張っているのがわかる

リヤビュー。タイヤは太い190サイズ。日本仕様のパワーなら180でもよかったのではないか

フロントサスペンションはφ43mmの倒立式。ブレーキディスクはφ320mm

二眼式のヘッドライトは、60W/55W×2と非常に明るい

アナログ+デジタルのメーター回り。オドメーターとトリップは切り替え式

リアブレーキはφ245mmディスクと1ポットピンスライド式キャリパーの組み合わせ

カウルを持たないFZ1はフロント回りの印象がずいぶん違う