これからもエンターテイメントを作り続ける
「どうにもできない時間の流れの中で、どうありたいかを意識している」と語る山崎監督。そんな彼がこれから作っていきたい映画とは、どんな作品なのだろうか?
「首尾一貫して、沢山の人たちに観てもらえる楽しいエンターテイメントを作りたいんです。でもその中で、ただのエンターテイメントじゃなくて、映画を観て帰る時に、大切な何かを少しでも感じてもらえるような、映画を作っていきたいと思ってます。観てくれた人の心の中に、何か小さな動きがあれば、それは映画というものが持っている可能性の中で、凄く大きな事じゃないかなと思うんです。自分としては、作品を観てくれた人の中にちょっとしたお土産を届けたいんです。それはこういう仕事に関われた者の使命だと思うんです。そういう映画を作っていきたいですね。観ていて楽しく、そしてちょっとお土産付きという映画を(笑)……」
「エンターテイメント映画で、観客の心に小さなお土産を届けたい」と語る山崎監督は、次回作で、初めて時代劇に挑戦する。
「時代劇に興味が無いような若い人にも楽しんでもらえる映画を作りたいです」
映画以外にも、PVやCF、ゲームソフトのオープニングムービーなども手がけている山崎監督。ここ数年は、それらの仕事に取り組む事によって、逆に映画への愛情を再認識したという。
「ここ数年は食わず嫌いをなくそうと思って、色々な事をしたんです。色んなことに挑戦できる環境でもあったんで。色々、挑戦してみて、何がしたいのかってことをもっとはっきりさせようと思ったんですね。それではっきりした事は、映画が大好きだっていう事。やっぱり、『映画はいいな』と思いました」
最後に監督は最新作である『ALWAYS 続・三丁目の夕日』のDVDについて、こう付け加えた。
「この作品は家に置いておくと良いと思うんですよ。落ち込んだ時とか、心の常備薬として家にあると、"いいなぁ"って気がするんです(笑)。特典的な部分だと、本当に僕はDVD特典映像が大好きなんで(笑)、自分が観てもこれならOKっていう特典にすべく、頑張って作りました。特に、VFXの解説は凄く気合が入ってますよ(笑)。豪華版だと、128ページの本が付いてますし。本屋で売ってもおかしくないほど、良い本が付いてます(笑)。『ALWAYS 続・三丁目の夕日』のことを色々、知りたいって人には第一級資料だと思います」
VFXを最大限有効に活用しつつ、時間の流れの中で懸命に生きる人々に姿を描き続けてきた山崎監督。これからも「観た人の心に残るお土産付きの映画」を作り続けてくれるに違いない。
山崎貴 プロフィール
1964年生。長野県出身。『スター・ウォーズ』(1977年)、『未知との遭遇』(1977年)といったSF映画に影響を受け、特撮クリエイターを目指す。阿佐ヶ谷美術学校卒業後、CGプロダクション白組に入社。『マルサの女』(1987年)、『スウィート・ホーム』(1989年)など多くの日本映画にSFX(特殊効果)アドバイザーとして参加。『ジュブナイル』(2000年)で映画監督デビューし、日本では馴染みの薄かったVFX(視覚効果)という映画用語を定着させた。続いて『リターナー』(2002年)を監督。『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)で、第29回日本アカデミー賞最優秀作品賞・監督賞など、最多12部門を受賞。続編である、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』(2007年)も監督。自身の全ての作品で監督だけでなく、脚本とVFX(視覚効果)を兼任している。
ALWAYS 続・三丁目の夕日
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インタビュー撮影:中田浩資