映画では脚本・監督・VFX(視覚効果)を担当する多才な山崎監督

様々な日本映画でSFX/VFXクリエイターとしてそのキャリアをスタートさせた山崎貴。彼は自身の得意分野であるVFXを多用した『ジュブナイル』(2000年)で映画監督デビュー。第2作の『リターナー』(2002年)では、その邦画とは思えないVFX映像や、高いエンタテインメント性が評価された。そんな山崎監督は『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)で、「50年前の懐かしい昭和の日本の物語」を説得力のある映像で描き大ヒットを記録。更に、第29回日本アカデミー賞作品賞や監督賞など最多12部門を受賞し、山崎監督は名実ともに日本の名監督のひとりとなった。そんな山崎監督の最新作『ALWAYS 続・三丁目の夕日』(2007年)のDVDが、5月16日に発売される。『ALWAYS 三丁目の夕日』2作品の話を中心に、山崎監督が映画に賭ける熱い想いを語りつくす。

「夕日町三丁目の人々にまた会いたかった」

『ALWAYS 三丁目の夕日』の高い評価と大ヒットを受けて、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』は製作された。当初、続編の予定はなかったため、山崎監督の中には戸惑いもあったという。

「続編を作る予定はありませんでした。でも、この映画の企画者であるROBOTの阿部さんが劇場の人たちや観客の反応を見て感動してしまったらしくて、『続編をやりたい』って言い出したんです(笑)。僕の中には、『勘弁してくれよ(笑)』っていう気持ちと、『また、あの登場人物たちに会えるのは、嬉しいなあ』っていう気持ちがありました。結局、『また会いたい』って気持ちの方が大きくて、続編を作る事に決めたんです」

この映画の原作である西岸良平の『三丁目の夕日 夕焼けの詩』(小学館・ビッグコミックオリジナル)は、連載開始から30年以上経過した現在も連載が継続中である。終わらない物語から映画を作る事の難しさを山崎監督も感じていたようだ。

「原作は、1話完結の作品なんです。その上で、映画は原作とは少し違った物語になっているので、原作のエピソードを幾つか使わせてもらいつつも、映画としての流れは共同脚本の古沢さんと考えました。でも原作のあるキャラクターで、原作とは少し違った流れの新たな1本の物語を作り、終わらせるというのは、結構大変でしたね」

これまで、『ジュブナイル』や『リターナー』というVFXを多用したSF映画を手がけてきた山崎監督。『ALWAYS三丁目の夕日』はVFXばかりでなく、役者たちの演技や物語で観客を魅了する作品だ。山崎監督自身、これまでの作品との違いを意識していたのだろうか?

「内容に関して、僕は『ジュブナイル』や『リターナー』も人情作品だと思ってるんです。だから、そういう意味では、全然変わっていないと思います。扱っている時間というか、題材が違っているだけで。ただSF映画では作品の中で、状況説明に時間を割かなくてはいけない。『ALWAYS』の2作品では"昭和です。50年前の日本です"という前提があり、状況説明に時間を割かなくて済む。状況説明に使ってた時間を、キャラクターの描写に使うことができるんです。ただ、やっぱり昭和なので、"現代では出来ない昭和ならではの物語を作ろう"というのは意識してました」

『ALWAYS』の2作品に登場する人々は、どこか我々現代人よりも、純粋で不器用な印象がある。脚本も担当した山崎監督は、どんな想いを込めてキャラクター達を創造したのだろうか?

「凄く奥ゆかしいというか、恋愛や人間関係に対して不器用な人たちの物語を描きたいと思っていました。そういう部分に関しては、昭和という時代に寄り添った形にはなっていますけど、基本的にはそれほど、これまでの僕の作品との違いはないです」

ALWAYS 続・三丁目の夕日

前作から4ヵ月後の昭和34年。あの夕日町三丁目の人々にも、様々な変化が起き始めていた……。淳之介(須賀健太)と暮らす茶川(吉岡秀隆)の元に、再び淳之介の実父である川渕(小日向文世)が現れる。一方、鈴木オートでは、事業に失敗した親戚の娘・美加(小池彩夢)を預かる事になるのだが……
(c)2007 「ALWAYS 続・三丁目の夕日」製作委員会