PRADA Phoneは、韓国LG電子がPRADAと提携し、グローバルなマーケティング戦略の目玉として売り出している機種だ。両社にとって最重視しているのはブランドイメージの向上と、幅広い層への訴求であることは想像に難くない。欧米での価格は600ユーロ(約9万円)で、携帯電話としてはやや高めの価格設定ではあるが、プラダ製品としては決して高いとはいえない。富裕層を中心に、日常的に持ち歩くファッションアイテムやライフスタイルにこだわりを持つ若い世代もターゲットにした商品といえそうだ。
タッチスクリーン仕様の携帯電話として、PRADA PhoneはiPhoneと比較されることが多いが、iPhoneがデジタルミュージックプレイヤーを進化させた「スマートフォン」的な製品であるのに対し、PRADA Phoneは外観こそPRADAの意匠が施されているが、使用感としてはあくまでも「携帯電話」である。
日本版の発売時期や価格はまだ明らかにされていないが、欧米市場と同様に、富裕層を中心に、流行に敏感な若い世代の間でも話題を集めることは必至だ。
日本では「L704i」として発売された「chocolate」と呼ばれるデザイン携帯が世界で1,000万台を超えるセールスを記録するなど、世界市場で成長を続けるLG電子は、現在世界第4位のシェアを誇る。2010年までのトップ3入りを目指しており、アジアにおける主要販売拠点として日本市場も重視している姿勢がうかがえる。 2006年に「SIMPURE L(L600i)」で日本市場への参入を果たしたが、前出のL704iのほかに、最大7.2Mbps対応のHSDPA対応モデル「L705iX」など注目モデルをリリースしているが、いまだ大ヒットモデルを出せずにいる。
2007年の日本での携帯電話販売台数は約5,200万台。その多くは国内メーカーが占め、海外メーカーのシェアは約4%に過ぎない。日本の携帯電話がキャリア(通信事業者)主導型で開発が進められ、端末の流通に多額の販売奨励金が使われる独特の市場であったことが最大の要因で、海外メーカーが日本の需要に即した製品を、需要に即した時期に発売するのは難しいとされていた。しかし、3Gの世界標準のひとつであるW-CDMA方式の普及や、販売奨励金の見直しなど、海外メーカーにとって日本は"戦いやすい"市場になりつつある。
日本でもきわめて人気の高いPRADAのブランドを冠した海外メーカー製端末が、日本市場でどのような評価を受けるか、その動向が注目される。
(ゴーズ/村元正剛)