エンタープライズでのWeb 2.0として、O'Reilly氏はまずDellの「Ideastorm」を例に挙げた。Dellの製品やサービスに関する顧客からのフィードバックを掲載するサイトで、ユーザー同士が意見を評価したり、Dellのスタッフを含めて議論したりすることが可能だ。DellはIdeastormのやり取りを、ユーザー本位の製品やサービス提供の実現に役立ている。現状では企業がWeb 2.0を取り入れる場合、Dellのようにユーザーからのコメント集めに活用したり、Webサイトのユーザーインタフェースの改善、さらには企業内ブログやWikiなどいわゆるWeb 2.0技術を社内で採用することが多い。だが企業においても"集合知"がWeb 2.0の本質であるのに変わりがないとO'Reilly氏は述べた。
企業における1.0と2.0の違いを説明する上で、以下のようなGoogle(2.0)と銀行(1.0)のIT比較を示した。
どちらも同じように大規模なデータセンターを持ち、ふるまいを含む顧客データを収集・更新し続けている。この2つを1.0と2.0に分ける唯一の違いは「収集データを基にしたリアルタイムなサービス提供」だ。Googleはユーザーデータを検索アルゴリズムや広告配信などに活かしてユーザーに返し、銀行は「バックアップをとるように、ため込むだけだ」とO'Reilly氏。Googleは検索においてリンクに含まれる意味を理解したことで成功した。企業も、そのデータの裏にある有用な情報を自覚すべきだという。さらに「企業が本当の意味でWeb 2.0を活用し始めるというのは、クローズドからオープンへの転換を指す」と付け加えた。
顧客データの活用例として、「Wesabe」というWebベースの会計ツールが紹介された。メンバーの銀行口座の取引やクレジットカード利用のデータを集計・分析し、それらを基に具体的な比較と共に節約のおすすめを提示してくれる。銀行も同様のサービスを提供できるが、今のところ銀行は顧客を知るためだけに顧客データを利用し、その価値を顧客には返していない。「企業が自らやらなければ、その穴を(Wesabeのような)インターネットスタートアップが埋めるだろう」とO'Reilly氏。