─ ターゲットがコンシューマーとなると、接続が面倒といって敬遠する家族の方もいると思いますが、そのあたりの工夫もされているのでしょうか?

栗山: そこが一番色々悩んだところですが、「メール交換方式」を採用することで解決しました。メールアドレスをPCリモーターとホームサーバPCをつなぐ鍵にする仕組みで、最初に任意のメールアドレスを登録して各PCリモーターの初期設定を済ませれば、IPアドレス問題など関係なく、自動でつながるようになります。

その秘密は、ホームサーバPCに組み込んだ独自の「サーバボード」です。このボードは2層式になっていまして、下段は画像を圧縮する機能を搭載し、上段は専用のワンチップマイコンを乗せています。このマイコンはPCの待機時電流で動作する仕様で、ホームサーバPCの電源がオフの状態でも20秒に1回のペースでメールサーバへ新着メールを読みに行きます。

ホームサーバPCに組み込まれているサーバボード。背面にあるLAN端子はマイコン専用のもので、PCのLANとは独立している。単品発売の予定は今のところはないという。なお撮影したものは試作機で、最終商品とは異なる

PCリモーターを起動して接続要求を出すと、登録したメールアドレスに「ホームサーバPCのIPアドレスを教えてくれ」というメッセージが自動で届きます。これをマイコンがキャッチして、現在のIPアドレスを返信します。すると、PCリモーター側でホームサーバPCのネット上の位置が特定でき、常に正しく接続できるというわけです。さらに、マイコンがPCI経由でホームサーバPCの電源を入れるので、PCリモーターがすぐに使えるようになります。

─ なるほど。しかし、特殊なメールが頻繁に届くとなると、専用のメールアドレスを用意したほうがいいですね

栗山: いえ、これらのメールは特殊な文字列を使っているうえ、マイコンがキャッチしたあとはメールサーバ上からも削除されるので、普段使っているメールアドレスを登録しても、通常は受信メールとして表に出てきません。ただ、ホームサーバPCの電源が完全に落ちていると、マイコンも動けませんから、ゴミメールとして振り分けられてしまうと思います。害はありませんが、待機電流は流しておいてください。

─ では外で使う場合にも、無線LANに接続するスキルさえあれば、本当に普通に使えるわけですね

栗山: 無線LANスポットも、一度設定を登録して、接続する優先順位を設定すれば、あとは自動で順番にアクセスしていきます。たとえば、よく利用する公衆無線LANスポットの場合、PCリモーターの「リモートスクリーン」を押して、自分のパスワードを入力すれば、あとは自動で普通に使える環境が整います。

今後の展望

─ 最初はホームサーバPCとPCリモーターのセット販売だけでしょうか?

栗山: はい。ただ、今後はPCリモーターのみの販売も考えております。さらに、サーバボードを組み込んだPCを発売して、お客様の選択肢を増やしていこうと思っております。

─ 第2弾の端末やサーバの構想もある程度固まっているのですか?

栗山: どうでしょう?(笑)。全体構想はあります。イー・モバイルさんのデータカードが使えるような端末や、IEEE802.11n対応モデルなど、そういったものを視野に入れながら、市場動向を見て展開していきます。