NECパーソナルプロダクツ ユビキタス事業開発本部長 栗山浩一氏

2007年12月、NECはホームサーバの新ブランド「Lui」を発表した。Luiはデジタル放送やマルチメディアコンテンツを一元管理する「ホームサーバPC」とクライアント端末の「PCリモーター」からなる製品。PCリモーターを持ち歩くことで、宅外であってもホームサーバPC内の著作権保護のかかっていない自作コンテンツを視聴したり、PC操作ができるようになる。

とはいえ、詳細なスペックなど、Luiの全容はまだベールに包まれている。まもなく登場する、新しいコンシューマー向けソリューションについて、Luiの生みの親であるNECパーソナルプロダクツ ユビキタス事業開発本部長 栗山浩一氏に話を伺った。

現在だからできる、コンテンツオンデマンド×PCオンデマンド

─ Luiという製品は、いつ頃から計画されていたのでしょうか?

栗山: 基礎研究とコンセプトメーキングは2~3年前から始まりました。最終的に組み上げる製品が固まったのは約1年前です。

ただ、そのバックグラウンドには、弊社がこれまで歩んできたコンシューマーPCの歴史があります。1994年にテレビチューナーを搭載した「98MULTi CanBe」を作り、Windows XP時代にはマルチチューナー搭載の"テレパソ"、そしてデジタル放送対応モデルをリリースしました。デジタル家電という点では、HDDレコーダーの「AX10」や「AX300」からの基礎技術があります。そうした流れを受けながら、次世代の様々な技術が登場して通信インフラが整ったときに、PCの使い方がどう変わるのかを想定しながらプロジェクトを進めてきました。

─ PCの使われ方はどう変わるとお考えですか?

栗山: コンシューマー向けという観点でいえば、家電との距離が縮まった点は大きいのですが、様々なデジタル機器の普及と同時に写真や音楽、動画といったデジタルコンテンツが分散してしまっていることが問題となっています。

たとえば、HDDレコーダーに録画したビデオを鑑賞するには、当たり前ですがHDDレコーダーを起動して、そのインタフェースに沿って再生しなければなりません。音楽データならポータブルプレーヤーを操作して、聴きたい曲を選ぶわけです。PCならこれらのコンテンツを一元管理して、Windowsという統一のインタフェースで利用できます。つまり、PCはフォトビューアや音楽プレーヤー、テレビ、DVDレコーダーとして普通に使えるわけです。

また、インターネットコンテンツがテレビや携帯電話で見られるようになり、ネットを利用することはごく普通の行為となりました。しかし、ネットサービスをフルで活用できるのは、やはりPCです。家庭でもデジタルコンテンツを扱う中枢をPCにすると、インターネットがさらに楽しめるようになるわけです。

─ ただ、コンテンツを一元管理すると、今度は使う場所が限定されるという点が気になりますが?

「近い将来にはWiMAXが実用化されるので、外出先から家のPCを操作するスタイルも現実的に」(栗山氏)

栗山: 確かにホームサーバ単独では使い道が限られますが、現在は色々な機器がネットワーク対応になっています。それらの機器と連携する使い方が広がってきたので、場所の制限は解消されるでしょう。Luiの場合は、PCリモーターがホームサーバPCにアクセスすることで、その中の(著作権保護のかかっていない)自作コンテンツをどこでも見られるようになるわけです。さらに、ホームサーバPCの情報がリアルタイムで取得できるため、PCリモーターは普通のPCとして利用できます。今は公衆無線LANサービスがある程度整っているうえ、近い将来にはWiMAXが実用化されるので、外出先から家のPCを操作するスタイルも現実的といえるでしょう。

─ メディアサーバにどこからでもアクセスできる環境が整ったわけですね

栗山: そうです。現在だから可能な「家庭内でDLNA対応のTV機器などでコンテンツを楽しむこと」と「PCオンデマンド」というコンセプトが、Luiの2本柱となっています。いつでもどこでも、簡単にネットサービスとPCの機能が使えるというソリューションです。ビジネスシーンでは、クライアントがサーバにアクセスして操作するという仕組みが以前から採用されていますが、Luiではその環境をコンシューマー向けに作ったと考えていただくことになります。