日光・月光菩薩を寺外で初展示
気象庁によるサクラの開花宣言を受けて、上野の森はすっかり"お花見態勢"だ。約1,200本というサクラの木々が、早くもうっすらと桜色に染まっている。まるで、はるばる奈良から初めて2体揃ってやってきた日光菩薩立像、月光菩薩立像を歓迎しているかのような華やかさである。
東京・上野の東京国立博物館・平成館で25日からはじまった平城京遷都1300年記念「国宝 薬師寺展」は、世界遺産でもある薬師寺が所蔵する仏像、絵画など寺宝の数々を一堂に集めたもの。その質の高さは空前絶後と主催者は語る。なかでも必見が、金堂の日光菩薩立像(にっこうぼさつりゅうぞう)と月光菩薩立像(がっこうぼさつりゅうぞう)。日本仏教彫刻の最高傑作のひとつとして知られる国宝だ。
この2体は、ふだん薬師寺金堂で本尊の薬師如来坐像を守るように両脇に立つ。どちらも像高3mを超す巨大な仏像だが、金堂内ではさらに背後に黄金の光背が頭上はるかに及ぶ。印を結んだ手、捻った腰、曲げた膝……、いずれも左右対称かのように作られており、見る者に不思議な安らぎを与える。
製作年代については、7世紀末とする説と718年とする説の間で議論があり、結論は出ていない。だが、飛鳥時代から奈良時代に作られたことに間違いはなく、その造形的な美しさ、高度な鋳造技術は、日本仏教彫刻の最高傑作のひとつとして、古くから高く評価されてきた。
そんな名品が、東京で見られる。しかも、日光菩薩、月光菩薩、2体揃って薬師寺の外へ出たのは、今回が初めてだという。さらに今回は、正面からだけではなく、ふだん薬師寺では見られない背面をはじめ、あらゆる角度から見られるよう、展示が工夫されているという。関係者が「空前絶後」という由縁だ。薬師寺で見たという方も、これはもう見ずにはおけない展覧会だ。