昨年の「GeForce 8800 GT」発表から今日に至るまでの時間は、GPU好きにとってはもう夢のような新製品ラッシュだったに違いない。本紙でも9600 GT、8800 GTS、Radeon HD 3850/3870、HD 3870 X2と新GPUをフォローし続けてきた訳だが、待てど暮らせどとんと音沙汰のないものがあった……そう、「NVIDIA製のハイエンドGPU」のアナウンスだ。

だが、ついにハイエンドGPUマニアの魂を揺さぶる新作「GeForce 9800 GX2」が発表された。今回はいち早く入手できた最新ハイエンドGPUの"感触"をお届けしたい。

新ハイエンドは"デュアルGPU"

NVIDIAは、かつて2個のGPUを1つのカードにまとめた「GeForce 7950 GX2」という製品をリリースしていたが、9800 GX2はその直系の子孫にあたる製品といえるだろう。搭載されているGPUは8800 GTS 512と同じストリーミングプロセッサ128個を内蔵する"G92"、各GPUには512MBのGDDR3メモリが付属する。スペックは下表の通りだが、8800 GTS 512よりもコアクロックが控えめになっている一方でメモリクロックを速くしてバランスをとっているようだ。

9800 GX2 8800 GTS 8800 GTX 8800 GT
コアクロック 600MHz 650MHz 575MHz 600MHz
メモリクロック 2GHz 1.94GHz 1.8GHz 1.8GHz
シェーダクロック 1.5GHz 1.62GHz 1.35GHz 1.5GHz
ストリーミングプロセッサ 128×2 128 128 112
搭載メモリ 512MB×2 512MB 768MB 512MB
メモリバス幅 256bit×2 256bit 384bit 256bit

AMDがHD 3870を2つ使ってHD 3870 X2を生み出したように、NVIDIAも同じアプローチを使ってハイエンドGPUを登場させた訳だが、結局NVIDIAも既存のGPUを使ったおかげで新鮮味は少々薄れてしまったと言うほかはない。DirectX 10.1への対応が見送られたままであるのも残念だ。

価格は599USドルからが予定されているが、日本国内に入ってくる頃には7万円台後半~8万円台後半という値段になる見込みだ。ハイエンドとはいえ、今どき7万円オーバーの製品がどれだけ売れるのかちょっと心配にもなる。

まるでカートリッジのような……

それでは9800 GX2の実物のチェックに入ろう。今回入手したのはZotac製「GF9800GX2 1GB DDR3 Dual DVI/HDMI」。これまでグラフィックスカードといえば必ず基板があって"ああここの下にGPUがあるんだな"とか想像できるのだが、9800 GX2は端子部分にちょっとだけ基板が見えるだけで、本体は表も裏も全てカバーに覆われている。まるでかつてのPentium II/IIIを思わせるカートリッジ状のユニットと化しているのだ!

中身の完全な分解は見送ったが(筆者はチキンなのだ)、中には2枚の基板が仕込まれており、各々に8800 GTS 512+512MBメモリが搭載されていると推測できる。

そしてSLIブリッジ用のコネクタは1つ。今回は割愛するが、9800 GX2を利用した"Quad SLI"運用も考慮されていることは明らかだ。

今回入手したZotac製「GF9800GX2 1GB DDR3 Dual DVI/HDMI」。NVIDIAから公開された製品画像と比較するに、リファレンスデザインそのままのものと考えてよさそうだ。全長は従来の8800 GTXと同サイズ

9800 GX2は2スロット構成なのだが、DVIコネクタは1枚の基板につき1つ、という感じに配置されている。HDMIコネクタが標準搭載されたかわりにTV出力が消えた点はちょっと時代を感じる

ただ注意したいのは電源コネクタの違いだ。9800 GX2では6ピンと8ピンの2つのコネクタへの電源供給が必須だが、従来のように6ピン2つで代用することはできない。脱落防止用のツメが入る空間がカバーによって大きく制限されており、8ピンコネクタに6ピンのケーブルは挿せないようになっているのだ。

電源は6ピン+8ピン。8ピンのコネクタには6ピンのケーブルで接続できるのが常だが、9800 GX2ではツメの入り込む空間が中央に限定されているため、8ピンのケーブルしか装着できなくなっている。電源ユニット側の8ピンコネクタのツメが太い場合は、カッターで削る等の処置が必要だろう

裏のカバーだけを外した状態。ファンの部分だけ基板がくりぬかれており、ボードの表裏から空気を採り入れる構造になっていることがわかる。また、パターンや小物パーツの配置から、1枚の基板にはGPUが1つとメモリという構成になっていることもわかる

2枚の基板は1枚のフィルムコネクタで結ばれている。9800 GX2全体を覆うカバーはこのフィルムコネクタを保護する役目もあるようだ

さて、ライバルのHD 3870 X2は技術的にはCrossFire状態でありながら、ドライバ上ではCrossFireであることはユーザーの目から完全に隠されていた。では9800 GX2はどうかというと、相変わらず"マルチGPUモードに設定する"必要がある。UIとしての洗練度は今一つ進歩していないようだ。

ドライバを導入すると出現するメニュー。ここでマルチGPUを有効にしないと、デュアルGPUとして正しく動作しない