中国の古典がオンラインゲームの「宝の山」に
オンラインゲームを巡る知財トラブルに関しては、原始的だが非常に厄介な「私設サーバー」や「チートサーバー」などの問題もある。
また2006年には、上海盛大網絡発展傘下でオンライン対戦プラットフォームを提供する上海浩方オンライン情報技術 (以下、「浩方」と略)に対して、総額1億2,000万元(約18億円)の賠償を求める訴訟があった。
「カウンターストライク(Counter-Strike)」「ウォークラフト(Warcraft)」「スタークラフト(StarCraft)」「ディアブロ(Diablo)」「エイジ オブ エンパイア(Age of Empires)」など5種類の海外オンラインゲームソフトの国内ライセンスを持つ神州奥美網絡が、その権利を侵されたとして訴訟を起こしたのだ。これまで国内で起きた最大規模のオンラインゲーム関連訴訟となった。
最近では、海外企業による中国の古典に対する知的財産権侵害と見られる事案も多発している。三国志や水滸伝など、いわゆる中国の「四大奇書」などが、アニメや漫画、オンラインゲームの分野で「宝の山」になっているのだ。
2005年、ポータルサイトも運営する網易は、「夢幻西游Online」と「大話西遊OnlineII」の2種類のゲームだけで、13億8,000万人民元(約207億円)の売り上げをあげた。また2006年の初め、コーエーは「三国志」「孔明伝」など8つのシリーズ製品のゲーム商標を登録した。今のところ、これらの中国の古典の名称が商標登録されたことはまだそれほど重視されていないが、近い将来、古典の知的財産権も法律の保護対象として扱われる可能性があると指摘する業界関係者は少なくない。
今後の発展には、高度な専門知識持つ人材育成が鍵
中国のオンラインゲーム業界が目指す発展モデルは、民族文化の特色豊かな、オリジナリティあふれるゲームを自主開発することだ。しかしそのためには、資本戦略の合理化、関連法律法規の整備などと共に、オリジナリティのあるゲームを開発するための、一貫した人材育成体系の整備が欠かせないというのが中国国内でほぼ共通した認識である。
優れたゲームデザイナーを育成することの重要さは、韓国、日本などのゲーム会社の成功事例を見れば明らかである。中国の問題点は、高度に専門的な知識を持つゲームデザイナーが欠乏していることだ。クリエーターを養成する専門学校なども整っていない。
若干、各地に「ゲーム学院」などの名を冠したデザイナー養成講座が開設されたが、参考となる成功例がないため、多くの学校や講座は苦境にあるという。教育こそ発展の基礎。より多くの、すぐれたゲームデザイナーを育成できてはじめて、中国でオンラインゲーム産業が発展する足腰ができあがってくるはずだ。