水素を直接使用するメリットは大きいが、その水素をどうやって利用者に供給するか、という問題は依然として大きい。(1)店頭でカートリッジに充填、(2)充填済みカートリッジと交換、(3)自宅で水道水を電気分解して生成--などの方法が考えられるが、それぞれ一長一短ですっきりしないのが現状だ。
自宅で充填できれば一番ラクなわけで、日本製鋼所は家庭での使用を想定した"ホームステーション"の試作機を展示していたが、まだ実用化にはサイズが大きすぎる上、コストも数万円ではきかないレベル。同社もこれで製品化は考えておらず、あくまでもコンセプトの提示といった意味合いでしかないようだ。
そこで注目されつつあるのが、電気分解以外で水素を発生させる技術だ。具体的には、アルミニウムやマグネシウムを使った方法があり、FC EXPOの会場でも展示やデモを行っていた企業があった。
まるで急須から水素
室蘭工業大学発のベンチャー企業であるハイドロデバイスは、"活性アルミ微粒子"を使った装置を展示。通常、アルミを水中に入れても表面に水酸化アルミニウムの膜ができ、そこで反応が止まってしまうが、この活性アルミ微粒子を使うと、全重量の70%程度までアルミを反応に使うことが可能になるのだそうだ。
化学の話になるので詳細は省略するが、この活性アルミ微粒子は、微粒子化とともに表面に無数のクラックを作成したもので、水分子と反応させることで粒子内部に水素化アルミニウム(AlH3)を多く含有した状態になっている。この粉末に水を加えることで、水素が簡単に取り出せるというわけだ。
展示されていたデバイスは3種類。最も小型のものは、まるでお茶を入れる急須のような形になっており、利用方法もティーバッグ状の活性アルミ微粒子を水に入れるという"お茶スタイル"。1袋(1g)から1.5リットル程度の水素を発生できるそうだ。
中程度のものは容器中に15gのアルミ微粒子が入っており、発電能力は数W程度。最も大きい装置の出力は10Wで、50リットルの水素が生成できるとのこと。販売は4月からの開始を考えているそうだ。
ところで同社がアルミを選んだのは、原料の安さがポイントだったとのこと。アルミのくず材を使用するので安いうえ、環境保全にも役立つと同社。現状は、原料が安くても実際には加工に少しコストがかかっているが、量産化すれば、1/10程度の値段で提供できるようになるということだ。
こちらはマグネシウム
一方、バイオコーク技研は、マグネシウムを使った水素生成装置のデモを行っていた。水素化マグネシウム(MgH2)の加水分解を利用したもので、1gの原料から2リットルの水素を発生させることが可能。MgH2の中の水素だけでなく、水分子(H2O)の水素も利用することで、15.2%という高い重量密度を実現している。
マグネシウムは地球上に豊富に存在するということで、同社も原料の低コストをアピールしていた。すでにサンプルは提供中とのことだ。