モバイル向けの燃料電池は、これまではどちらかというとダイレクトメタノール型が一般的だったが、なかなか実用化されないうちに、今年のFC EXPOでは水素を直接供給するタイプに勢いが出てきた。メタノールとは違って二酸化炭素を出さないうえ、効率も高い。将来的にはこちらが主流になると思われるが、諸課題さえクリアできれば、一気にそれが進む可能性はある。
水素吸蔵合金なのに軽い!
水素吸蔵合金(MH)を使った燃料タンクを販売している日本製鋼所は、モバイル機器向けの「マイクロMHタンク」を昨年に続き出展。未発売ではあるが、水素貯蔵量が6.5リットルのAタイプ、8.5リットルのBタイプ、9.5リットルのCタイプが用意されている。
同社ブース内では、このうちのCタイプを使った外付け充電器のデモを、スウェーデンのmyFCという企業が行っていた。4セルを内蔵する「Excess Charger」というもので、実際に動作する試作機を持ち込んでいたが、カートリッジ1つで携帯電話を5回くらい充電可能だという。100ドル以下での発売を見込んでいるそうだ。
しかし、水素吸蔵合金のデメリットの1つは、何よりその重さにある。水素吸蔵合金そのものの重さもあるし、水素の圧力に耐えるために厚くなっているタンクの重さもある。タンクの大きさ自体は小さいのだが、持ってみると意外なほどずっしりと重いのだ。
そこで、日本製鋼所が開発しているのが、新しい水素吸蔵合金材料。注目されているのは水素化アルミニウム(AlH3)で、Bタイプのタンクの場合、従来のAB5型に比べて重さは91gから39gへと半分以下に軽量化された。しかも、水素貯蔵量は8.5リットルから12.9リットルへと大幅に増えている。実際にタンクを持ってみると非常に軽く、十分実用的に思える。
しかし一方で、(1)再利用が難しい(つまり1次電池のような使い方になってしまう)、(2)水素を取り出すのに100℃くらいの熱が必要、といった課題があるそうで、実用化には、この問題をクリアするか、あるいはこの条件でも良いアプリケーションを見つける必要がありそうだ。この課題はかなり難しいらしく、担当者は「5年くらいでなんとかしたい」と述べていた。
吸蔵合金以外の技術も
前述の栗田工業も、水素を貯蔵する技術の開発を行っている。実物の展示はまだ何もなかったが、固体状メタノール燃料と同様に包接化合技術を使った研究をしているとのことで、パネルによる展示のみ行われていた。
性能の1つの指標となるのは重量密度だが、水素吸蔵合金が一般的に数%であるのに対し、水素包接技術の目標は6%とされる。まだこの数値には達していないとのことだが、水素吸蔵合金よりも軽量になると期待されており、今後に注目だ。
燃料電池版のi-SOBOTが動作
FC-R&Dは、タカラトミーの小型2足歩行ロボット「i-SOBOT」を燃料電池で動かすというデモを行い、来場者の注目を集めていた。そのほかブース内では、ノートPC用電源、携帯電話用充電器、モバイルプリンタ用充電器のサンプルも展示されていた。これらには全て水素吸蔵合金のタンクが使用されている。