広くなったファインダーと理想主義

フォーサーズの泣き所のひとつはファインダーの狭さだった。基本的にファインダーの広さは「撮像素子サイズ×ファインダー倍率×視野率」で決まる。この点、撮像素子の小さなフォーサーズが不利なのは否めない。倍率を上げれば見た目のファインダーは広くなるが、下手に上げると周辺が暗くなるなど、見づらくなることもある。しかしE-3のファインダーはいきなり広くなった。実測で約25度(対角)もある。EOS-1Dsなどのフルサイズ系には及ばないものの、APS-Cクラスよりも広い。これには少々驚いた。倍率は1.15倍だが、周辺が歪むような感じもなく快適だ。開発陣は相当がんばったのだと思う。

解像力は1800TV本強といったところ。1010万画素としては十分な解像力だろう。非常にクリアな画像で、かといって無理やりシャープネスを上げてはいない。好感が持てる解像感だ。こういったテストチャートで気付くのは、像の歪みや周辺落ちが少なく、非常にフラット感が高いこと。フルサイズはもちろん、APS-Cでも周辺落ちなどが現われて当然だが、E-3はそれがとても少ない(レンズ:12-60mm F2.8-4.0)。フォーサーズ発表当時、「これがデジタルに最適なサイズ」というようなことをメーカーサイドが言っていたと思うが、間違っていないと思う。

ついでにアスペクト比の話をしよう。ほかのデジタル一眼レフがすべて縦横比が2:3なのに対し、フォーサーズは3:4の比率を採用している。これをとやかく言う人もいるようだが、だったら6×7(ロクナナ)や4×5(シノゴ)はどうなる? 6×6(ロクロク)などという正方フォーマットもあるぐらいで、アスペクト比は撮影者の好みとそのシーンをどう切り取るかということに過ぎない。いや、理屈として3:4が優れているという話もある。レンズによって集まる光は中央に近いほど豊かであり、周辺ほどツラくなる。図を書いてみればわかるが、2:3のフォーマットより、3:4のフォーサーズのほうが光のおいしいところをより多く使えるのだ。フォーサーズ発表から5年が経過した。E-410で小型化の優位性を証明し、E-3で描写の優位性を証明しつつある。少々時間はかかったが。

ファインダー内部。視野角は実測で約25度もあり、いままでのフォーサーズとは思えないほど広く快適

画面全体を4×6エリアに分割する、「E-3」専用の方眼マット式フォーカシングスクリーン。交換は窓口で行なう

解像力チャートを撮影。撮影距離は約93cm
ED 12-60mm F2.8-4.0 / 60mm(120mm相当) / L+SF(JPEG) / マニュアル(F4、1/20秒) / WB:オート / ISO 100 / 仕上がり:NATURAL
実画像はこちら

E-3に使われているLiveMOSセンサー。有効画素数は約1010万画素

世界最速のオートフォーカスはダテではない

オートフォーカスは非常に速い。中央1点のAFポイントを使ってのテストだが、EV5の明るさで平均0.6秒、EV1でも平均1.2秒だった(レンズ:12-60mm F2.8-4.0)。これは過去にテストしたEOS-1D MarkIIIの0.7秒/1.6秒よりも速く、同様のテストを行なうようになってから最もよい成績だった。さすが世界最速を謳うだけのことはある。

ただ、速いあまりに勘違い(?)もあるようで、何回かピントを外すことがあった。特定のターゲットが苦手というわけではないが、ふとした拍子に外れるという感じだ。また、非常に強力なモーターで動かしているようで、トルク反動すら感じられる。ブランコのように絶えず前後に動くものを狙うとガクガクと震えながらピントを合わせようとする。このあたりはもう少し洗練させてほしいところ。それでもこの速さは大したものである。

オートフォーカスの速さを調べた。測定は秒針が「0」を指したときにレリーズし、撮影までの時間を画像から読み取っている。そのためレリーズタイムラグなども含まれる
ED 12-60mm F2.8-4.0/60mm(120mm相当) / L+SF(JPEG) / マニュアル(F4、1/60秒) / WB:オート / ISO 100 / 仕上がり:NATURAL

左の条件でのオートフォーカスの速さは、EV5の明るさで平均0.6秒と非常に高速だった。さらに、EV1というのは非常に暗いのだが、それでも平均約1.2秒という見事な速さを見せた。ただしまれにピントが合わないこともあるのが気になる。被写体との距離は122cm。

ダイナミックシングルターゲットAFモード+コンティニュアスAF(C-AF)とし、ブランコを連写で撮影した。ブランコはカメラが苦手な被写体のひとつだが、けっこうな確率で撮影できている
ED 12-60mm F2.8-4.0 / 12mm(24mm相当) / M+SF(JPEG) / プログラムAE(F3.5~4、1/320~1/400秒) / WB:オート / ISO 100 / 仕上がり:NATURAL

手ブレ補正は標準の「I.S.1」と、横方向の流し撮り用(縦方向のみ補正)の「I.S.2」の2モードが選択できる

縦方向の流し撮りだが、なぜか背景が止まり、中央の被写体がぶれてしまった。手ブレ補正(I.S.1)が影響しているかは不明
ED 12-60mm F2.8-4.0 / 60mm(120mm相当) / L+SF(JPEG) / シャッター速度優先AE(1/60秒) / WB:オート / ISO 400 / 仕上がり:NATURAL

ノイズは普通だが、もっと高感度を

高感度時のノイズをチェックしてみた。初期状態ではISO 800ですこしざらつきが見えはじめ、ISO 1600ではざらつきとともに像がかなり緩くなる。ISO 3200はざらつきはもちろん、本来の色とは別の色が乗ることもあるようだ。エマージェンシーと考えたい。常用はISO 800までを目安に、女性の肌など滑らかさが必要ならISO 400あたりに抑えたほうがいい。アドベンチャーカメラらしく、荒々しさがあってもいいというならISO 1600まで常用してもかまわないだろう。

もうひとつ、E-3には高感度時のノイズを抑える「ノイズフィルタ」機能があり、「OFF/弱/標準/強」の4段階から設定できる。初期状態では「標準」だ。これも設定を変えて試してみたが、強くかけるほどエッジが緩くなり、シャープさが失われる傾向がある。「強」にするとISO 1600でもずいぶんノイズは消えるが、かなりゆるい像になる。「標準」でもけっこう掛かっているようなので、シャープさが欲しいなら「弱」まで下げたほうがいいかもしれない。ただし「弱」ではISO 800でもかなりざらついて見える。ちょっと悩ましいところだ。

ノイズについては長秒時のノイズを抑える「ノイズリダクション」と、高感度時のノイズを低減する「ノイズフィルタ」が用意されている

ISO感度と「ノイズフィルタ」を組み合わせ、ノイズの発生をチェックした。以下、撮影設定は同じ
ED 12-60mm F2.8-4.0 / 42mm(84mm相当) / L+SF(JPEG) / プログラムAE / WB:オート / 仕上がり:NATURAL

ISO 100 / ノイズフィルタ:標準

ISO 200 / ノイズフィルタ:標準

ISO 400 / ノイズフィルタ:標準

ISO 800 / ノイズフィルタ:標準

ISO 1600 / ノイズフィルタ:標準

ISO 3200 / ノイズフィルタ:標準

ISO 800 / ノイズフィルタ:なし

ISO 1600 / ノイズフィルタ:なし

ISO 800 / ノイズフィルタ:弱

ISO 1600 / ノイズフィルタ:弱

ISO 800 / ノイズフィルタ:強

ISO 1600 / ノイズフィルタ:強