柳楽優弥と石原さとみら、若い俳優たちの演技について
ハンバートハンバートの優しい歌声と、包帯を巻いて他人の心の傷を癒すという馴染みない映像が見事に溶け合い、映画『包帯クラブ』は原作通りの、優しい世界を描くことに成功している。その世界で、見事な演技を披露した柳楽優弥や石原さとみという若い役者たちに、堤監督はどう関わっていったのだろう。
「これまでも、ずっと若い人と仕事をしてきたが、やればやるほど、私は歳をとっていくわけです(笑)。娘や息子よりも若い人の心情を描くには、彼らのことを理解しなければならない。撮影1カ月前に、ロケ地で合宿して、ほかのスタッフなしでリハーサルをやったんです。合宿して、共に時間を過ごすうちに、説明しなくても通じ合うものを感じました。作品のテーマに関しても、彼らは僕より自然に受け入れていました。傷を治すのは簡単ではない、でも何もしないよりは、伝わるかもしれない。いろいろな善意は社会にある。高邁な倫理や理念がなくても、できるところからやる。これを理屈でなく、若い世代の彼らは、『楽しいから』やる。こういったテーマを若い役者たちは、感覚で理解していました」
柳楽優弥(左)と石原さとみ |
主演の柳楽優弥と石原さとみについて、堤監督はこう語った。
「柳楽君は、自分であのディノのキャラクターを作って来ました。羞恥心を捨てるために、上半身裸で町を歩いたりとか、色々してくれたようです。あの映画のキャラクターは彼の思い入れのままです。思い入れの強いやつが画面を制するんです。市役所の屋上のシーンなんかは、落ちるんじゃないかとヒヤヒヤするぐらい頑張ってくれた。石原さんは、スキルの高い女優さんなんで、安定感ありますし、すでに大女優という感じですね」
そんな若い俳優たちが熱演する同作に関して、堤監督はこれまでの他の作品とは違う、強い想いがあるようだ。
「正直、公開時に大ヒットした作品ではないですが、いつ観ても色あせる作品ではないという自信があります。僕自身の作品に対する印象が、何も変わってないんです。僕も石原さんも柳楽君も、みんなやって良かったという気持ちしかない。ネガティブな声はどこからも聞こえてこない。満足度が異常に高いんです。かっこ悪いけど、僕もこの作品を作って癒されたという満足感だけがある。このDVDには、それが詰まっています」