サーフェス・コンピューティングは、1歳の子供が両手を使って食べものをぐちゃぐちゃにしながら落書きしているのを見て、「片手だけで絵を描こうとしている自分たちよりも、1歳の子供の方が賢いじゃないか」と感じたのがきっかけの1つとなった。またオーディオの専門家でもあるBuxton氏は、スピーカーとマイクからもアイディアを得た。機械的に同じ構造のスピーカーとマイクを通じてオーディオが双方向の仕組みになっていることから、ビデオもディスプレーを媒介に双方向にならないかと考えたそうだ。
タンジブル・コンピューティングは、サーフェス用のアイコンを考えたのが始まりだった。PCのデスクトップでは、機能のイラストに過ぎない小さなアイコンがユーザーに多くを物語る。同様に視覚以外にも訴えるアイコンを実現できないか考えた。そんな時に日本のWacomで、模型をタブレット上でアイコンのように使うファイコン(Phycon)のプロトタイプを見て感銘を受けた。例えば消しゴムの模型をタブレットにあてると消しゴムと認識され、こすった部分の絵が消える。インク壺の模型をタブレット上に置くと、色のパレットが画面上に現れ、色を選択してインク壺のふたを押すと確定する。
ファイコンのコンセプトを採り入れたタンジブル・コンピューティングは、メディアプレーヤー、携帯電話、クレジットカードやコップなど、ユーザーの身の回りにあるものをサーフェス上に置くだけでタンジブル・デバイスとして認識され、それぞれに必要な機能が自動的に利用可能になる。例えばZuneをサーフェス上に置いたら、マルチメディアプレーヤーと認識され、内部の音楽やビデオがサーフェス上に展開される。複数のZuneを置き、片方のZuneの音楽アルバムのジャケット写真をドラッグしてドロップするだけで、もう一方のZuneに転送できる。手でつかんで放り込むような感覚なので、Surfaceに初めて触る人でも、すぐにできる。ただしBuxton氏は「自然なインタラクションは簡単なものに見えるが、本質的にはリッチである」と付け加えた。「普通のPCと2台のZuneを用意して、自分の母親が同じ作業をできるようになるまで相当長い時間が必要だろうし、教えるのも大変だ」と笑った。