体制再編に足を取られた中国Yahoo!
1998年末、Infoseekを退職した彦宏氏はあるVCから120万ドルの融資を得て帰国し、北京で百度を起業した。彦宏氏が百度を立ち上げた当時、検索サービスを提供する中国国内の企業としては、中国Yahoo!のほか、ポータルサイトを運営する3721(中文上網)、IT系情報サイトを運営するCNNIC(中国互聯網絡信息中心)などがあったが、価格競争や代理店体制の混乱、技術的問題などにより、いずれも苦戦を強いられていた。
新規参入者の百度も、市場の行き詰まり状態から逃がれられず、2001年後半までは、業績が振るわなかった。その後、中国Yahoo!による3721買収、アリババの中国Yahoo!への資本参加などがあったが、中国Yahoo!は体制再編に足を取られ、国内におけるリーディングポジションを手放してしまった。技術とサービス双方に問題を抱えていたCNNICは、検索エンジン市場から撤退し、情報サイト運営に経営資源を集中するようになった。
百度のNASDQ上場に急ぎGoogle中国を設立
Googleは2000年から中国語による検索エンジンサービスを提供し始めたが、2005年5月までは、中国に支社や事務所を設立しなかったし、中国国内にサーバさえ置かなかった。このため、海外で圧倒的な強さをもつGoogleも、長らく中国のユーザーとの距離を縮められなかった。百度はこのような、"強者不在"という絶好のチャンスを上手につかむことで、技術的優位を最大限に生かし、中国市場で急速な成長を遂げたのだった。
2003年末、百度は3回目となる増資を行った。当時Googleは、すでに株式上場の準備段階に入っていたが、投資家により高く評価されるよう中国進出を急ぎ、百度との資本提携交渉に入った。2004年6月、Googleは百度に499万ドル(約5億4,000万円)を出資し、株式の2.6%を取得することで合意した。Googleは、百度の株式の買い増しや百度とのJV(合弁会社)の設立などにも言及した。
2005年6月、百度が株式上場する直前に、Google CEOのEric Schmidt氏が百度を電撃訪問し、百度を買収する意向を示したが、彦宏氏にきっぱり断わられた。その直後、百度は中国企業として初めてNASDAQ上場を果たす。これを受け、Googleは急ぎGoogle中国を設立、総裁として李開復氏を迎えたのだった。