表現することで、児童・生徒は良くなる傾向に
パネリストの発言が一巡したところで、モデレーターを務める慶大DMC機構の中村氏が会場の聴講者に、「モバイルの文化が子供達のコミュニケーション能力に、どのようなプラス効果があるか知りたい」と水を向けたところ、フォーラムに来場していた、無料ホームページ作成サービスを展開する「魔法のiらんど」の運営者から発言があった。
発言によると、魔法のiらんどは中高生を中心に約570万のIDが登録されているが、最近話題の"ケータイ小説"を自ら書く子供達も多く、「モバイルを創造活動に利用するという点で、日本の中高生は世界でもかなり進んでいる」という。
また、子供達が安全、安心に使うために「アイポリス」を運用しており、ルールに違反して使っている場合は、その場ですぐに分かるようになっている。だが、「今回の総務大臣要請によって、下手をすると『魔法のiらんど』につながらなくなってしまう」と指摘。「表現できる場をいきなり制限されたというショックが、将来にわたって子供達の心に残ることを危惧している」との懸念が表明された。
中村氏から再度「困ったコンテンツが出てくることもあるのではないか」との質問があったが、「魔法のiらんどの8年間の運営の中で、そうしたコンテンツは非常に少なくなってきている。表現をしていると、子供は非常にいい子供になっていく」との回答があった。
対応に困った親がフィルタリングにすがる側面も
その後会場では、今回の総務大臣要請による市場の混乱について議論が移った。南場氏は、「2007年11月に、総務省の『インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会』がようやく始まったばかりの時期に、コンテンツ事業者のヒアリングもなしにフィルタリングをデフォルト化するような要請が出てびっくりした」と発言。
MCFの岸原氏は「今の日本の仕組みだと、声をあげないとそのまま流れていってしまう。大きな項目があって大勢がそれに賛同すると、適正な議論もなくそのまま進んでしまう。こうした仕組みに対するセーフティネットが必要だ」と話した。
こうした意見に関し、モデレーターの中村氏は総務省の岡村氏に対し、「このような混乱を総務省は予測していなかったのか」と質問。これに対し岡村氏は「振り子が左右に触れる傾向は近年確かに強まっている。こうした中では、『子供が携帯を持つのはけしからん』というような極端な議論も出てきているが、その背景には、親が子供のデジタル化のスピードについていけず、フィルタリングにすがろうとする状況もあるのではないか」と述べた。
その上で今回の要請について、「いろんな批判があるのは理解しており、第三者機関の設立など、あるべき着地点を探っていきたい」と述べた。