「80後」という言葉が、いま中国で流行している。1980年代生まれの人を指す言葉だ。最年長の80後は1980年生まれで、今年27歳。世界で最も厳しいと言われる中国の大学入試競争を勝ち抜いたエリートでも、まだ大学を卒業して5年、大学院を修了した人なら修了後2年しかたっておらず、いわばスタートラインを切ったばかりの社会人といえる。政府機関や企業などでは、ピラミッド型組織の底部に位置する存在にすぎない。

1980年代生まれの「80後」、若者やVCが熱い視線

しかし、中国のネット業界において80後といえば、優れた才能と旺盛なベンチャー精神を武器に企業を起こし、数千万元、数億元の富を創り出す若手の起業家を指す言葉だ。彼らは、時にマスコミによって「中国のビル・ゲイツ」などと祭り上げられ、CCTV(中央電子台)などキー局のトークショーに出演し、中国の若者から熱い視線を浴びることも多い。

彼らはチャイニーズドリームのシンボルで、ベンチャーキャピタル(VC)が最も熱い視線を投げかける対象でもある。彼らは輝かしいスターだが、単にそれだけにとどまらず、その存在は中国の未来にとっても非常に重要な意義を持っている。本レポートでは、そうした80後の代表的な人物を取り上げ、彼らの創業ストーリーを通してその素顔を迫りたい。

幼少のころからオンラインゲームにビジネスチャンス見出す

昨年11月初めから、中国のメディアは「休学中の2年間に10億元もの富を創造」「夢は世界最大のオンラインゲーム会社」「第2の馬雲(ECサイト大手のアリババ創業者でCEO)」「起業家の模範」「史上最強の学生」「30階建てのオンラインゲームビルディングがまもなく着工」などさまざまな見出しをつけて、ある青年起業家をめぐる熱い報道合戦を繰り広げている。その人物とは、今年弱冠23歳の杭州渡口網絡(以下、渡口網絡)総裁の金津氏だ。

金氏は子供時代から大のゲーム好きで、しばしばお手伝さんにゲームセンターから家まで「強制連行」されたという逸話を持つ。だが、裕福な家に生まれた金氏は、ゲームが面白いだけではなく、金儲けもできると幼い頃から感じていたという。

最初の収入も、電子ゲーム大会で優勝した賞金300元(約4,500円)だった。ゲームに熱中していたこともあり、中国の大学入試統一試験である「普通高等学校招生全国統一考試(高考))の点数はあまり高くはなかったというが、入学してからも、ゲームに耽溺しながら創業の夢を描いていた。

鋭いビジネスセンスを持っていた金氏は、しばらくしてビジネスチャンスを発見する。