ここのところあまりいいニュースのないHD DVDだが、年末に登場したRD-A301はBD勢と同様に好調のようだ。それもそのはず、レコーダーとしてのHD DVDが見劣りする原因であった記録容量の少なさは、MPEG4 AVCを採用することである程度解消できるからだ。BSデジタルの2時間を超える映画が、安価な1層HD DVDに保存できるようになったことは、レコーダーの使い勝手を大幅に改善したと言っていい。また、DVDへのハイビジョン番組の録画も可能と、最新機能の搭載ではBD勢にも負けていない。そこで武器になるのが、市場価格の安さ。HD DVDの巻き返しを期待させるモデルと言える。

東芝 ヴァルディア RD-A301 市場価格10万8000円前後

RDシリーズの伝統が生かされたMPEG4 AVC録画

RD-A301のMPEG4 AVC録画は、「HDトランスコーダー」で行う。現状ではMPEG4 AVC形式で直接HDDに録画することはできないが、後日バージョンアップにて対応予定となっている。そのため、番組の録画はダイレクト録画(TSモード)で行い、MPEG4 AVC(TSEモード)へはダビング時に変換することになる。記録解像度はフルハイビジョンで、他にはない特徴として、47段階のマニュアルモード(以下MNモード)を備えている点。これは、最大17Mbps~最小3.6Mbpsの範囲で細かく調節できる。これはとても便利で、HD DVDに保存するにはほんのわずか容量が足りない番組を、画質劣化を最小に抑えて収録することができるようになる。BSデジタルの映画などでは、2時間数十分という半端な時間の番組も少なくはないので、映画1本をディスク1枚に収録する場合などには重宝するだろう。なお、テストでは、初期設定されているSP(14.5Mbps)とLP(6.8Mbps)に加え、BD機の最長録画時間モードに近い転送レートのMN(5.6Mbps)と、参考のために本機の最長録画時間モードであるMN(3.6Mbps)でテストしている。

RD-A301の録画モード

ダイレクト録画の画質は解像度の高さを意識したもので、白ピークをやや伸ばし、全体に明るく精細な映像になっている。そのため、暗部も比較的明るめでディテールもきちんと再現されていることがわかる。ただし、ノイズは少々目立つ。ノイズが気になる場合は3D-DNRを使うといいだろう。音質は少々線が細く、もう少し力強さが欲しいと感じる。比較したモデルが音質にもこだわった上級モデルだけに、ここの差は仕方ないだろう。

SPモードに変換した映像は、他と同傾向で、もともとあったノイズ感がやや収まり、かえって見やすい映像になった印象。山が緑に覆われた部分でのちらつきはやや多いようだが、解像度的な劣化感はない。SPモードなら、1層HD DVDに約2時間3分録画できるので、映画などを画質劣化なく録画するような使い方でも十分実用的と言える。

LPモードになると、拡大画像のイスの背もたれの模様などが甘くなっていることがわかる。ただし、人物の表情のニュアンスはうまく残っている。若干映像はソフトになるものの、情報量としては不足はない。ただし、カメラのパンニングやズームなど、画面全体が大きく動くシーンでは、床や天井といった部分で、周期的にノイズが出たり消えたりする現象が目に付く。これは、他機種でも見られたものなので、MPEG4 AVCで情報量が足りないときに出やすいノイズなのだろう。

MN(5.6)モードになると、映像の甘さがより顕著になる。ややソフトながらも、選手のゼッケンの文字はきちんと読むことができ、ハイビジョンらしさは保たれている。ここでも、周期的なノイズの発生が目立ってくる。これについては目に付きやすい部分なので改善に期待したい。なお、MN(3.6)モードだが、解像度的にはかなり落差があり、強いて言えばDVDをアップコンバートしたような映像になってしまう。暗いシーンや動きのある映像ではノイズもかなり目立つので、HD DVDなどへの保存という意味では、あまり実用的とは言えないだろう。

ちなみに本機は年末に行われたソフトウェアアップグレード済みで、最新のVer02となっている。MPEG4 AVCへの変換における画質改善が図られたとのことだが、他のモデルと比べると低ビットレート時の画質はやや劣る。今後上位モデルの登場も予定されているだけに、改善に期待したいことろだ。

編集機能の充実度では他を圧倒する

ヴァルディアシリーズと言えば、充実した編集機能が有名だ。機能自体の豊富さも他にはない特徴だが、ここ最近のモデルでは簡単&快適操作を意識した機能強化が図られていることが特徴。たとえば、チャプター分割は自動チャプター分割が可能だが、さらにCM部分を省いたプレイリストまで自動作成が可能。このプレイリストはダビングにも使えるので、CMカット編集はワンタッチで行えることになる。しかも、自動分割されたチャプター位置を微調整するといった従来の多機能な編集も可能。こちらは操作のレスポンスが従来に比べてかなり高速化され、今までのモデルではイライラしがちだった編集操作がストレスなく行えるようになったのもありがたいところだ。

今回、MPEG4 AVC録画に加えて、編集機能も重視したのは、「コピー9回+ムーブ1回(ダビング10)」時代を見据えてのこと。今後、編集やダビングの機会はますます増えることが予想される。特に、ダビングが複数行えるようになると、ディスクなどへのダビングのほか、サッカーのリーグ戦の全試合からゴールシーンだけを集めた名場面集づくりなども楽しめるようになる。このプレイリストをダビングにも使えるのは現状ではヴァルディアだけだ(ソニーのブルーレイはプレイリスト編集は可能だが、現状は再生専用でダビングには使えない)。

RD-A301の編集画面

レコーダーとしての充実度を考えれば、ヴァルディアという選択肢はある

同時に取材したBD勢が上位モデルということもあり、こと画質・音質の点では不利な結果に終わってしまったが、編集機能の点でも触れたとおり、RD-A301はレコーダーとしての実力はすこぶる優れている。番組表も、他社モデルでは地上デジタル/BSデジタル/CSデジタルが独立した番組表を採用するなか、すべてを混在した状態で好きなチャンネルだけを表示できるのはヴァルディアの特徴のひとつ。最新モデルでは、番組の再生終了後などに、よく使う機能だけをリストアップする「つぎこれ」メニューを追加し、もともとの多機能をより快適に使える工夫も加わっている。また、PCとの連係が可能な「ネットdeナビ」もダビング10時代には再び注目を集めそうな機能と言える。

このように、レコーダーとして数々の独自機能を持つRD-A301は、HD DVD搭載ということで選択肢から外してしまうには惜しいモデルだ。仮にフォーマット戦争には勝てなくても、ハイビジョン録画ができなくなってしまうわけではない。あまりBDかHD DVDかを気にしすぎず、レコーダーとして自分が使いやすいと感じるモデルを選択した方が真の意味で賢い選択と言えるのではないだろうか。

RD-A301の番組表画面