テレビ録画主体のBDZ-T70/T50、ハイビジョンムービーとの手軽なダビングができるBDZ-L70、そしてホームシアターを意識したBDZ-X90と、それぞれに異なるスタイルを設定したラインアップを用意しているソニー。いち早くBD主体の体勢に移行するなど、その意気込みは本格的だ。特に、BDZ-X90は、同社の薄型テレビ「ブラビア」の上級モデルにも搭載される高画質回路「DRC-MFv2.5」を採用。ハイビジョン信号をさらにきめ細やかな映像に作りかえる独自技術で、薄型テレビだけでなくプロジェクターなどを使った100インチ級の大画面視聴まで意識したものだ。音質面においても、ドルビーTrue HDやDTS-HDなどのHDオーディオ対応をはじめ、HDMI出力される音声のジッター対策など、入念な設計と作り込みが行われている。
特に筐体の作りは、今回テストした3モデル中で、一番堅牢な作りとなっている。不要な振動の影響などを嫌い、ボディの作りにまでこだわるAVユーザーとしては、もっとも好ましい仕上がりと言えるだろう。そして、冷却用のファンノイズなど、レコーダー自身の静粛性も一番優れており、ホームシアターでの使用にきちんと配慮している。なお、HDD容量は500GBと最上位モデルとしては決して大容量ではないが、MPEG4 AVC録画を搭載しているため、実用上の不満は少ないだろう。
MPEG4 AVC録画は1440×1080記録だが、見劣りはなし
ソニーが採用した「高精度ハイビジョンエンコーダー」は、MPEG4 AVC Main Profile対応で映像記録の画素数は1440×1080画素となる。パナソニックや東芝のフルハイビジョン記録に比べるとやや物足りなさを感じるが、長時間録画としては情報量の削減や不要なノイズを抑えることも重要で、記録解像度が少ないぶん圧縮による画質劣化の影響も少なくなるというメリットもある。MEPG4 AVCでの録画モードには、XR/XSR/SR/LSRの4つがあり、それぞれの転送レートは15M/12M/8M/6Mとなっている。ユニークなのは、標準画質で録画を行うLR/ERモードも用意していること。転送レートは4M/2MbpsでBS/CSデジタル放送のSD放送の録画に有効だ。
ではまず、ダイレクトモードの画質を見ていこう。ディテール感の緻密さが印象的な映像で、テストで使用した40V型クラスの画面はもちろん、100インチ超の大画面でも高密度の映像が楽しめることを予想させる映像だ。色乗りは忠実指向で、特に色の豊かさを際立たせるということはないが、暗部での色再現もきちんとしており、鮮やかな色からややくすんだ色まで幅広い再現ができている。音質的にもハイファイ指向でよけいな色づけは少ない。情報量の多い音で、サラウンド音声の空間の広がりも豊かに再現された。
最高画質のXRモードは、もともとのノイズが減ったわけではないが、ちらつきは抑えられ、個々のノイズも小さく目立ちにくくなっている。当然劣化感はまるで感じられない。記録解像度は下がっているはずなのに、むしろ解像度感としては向上しているように感じるのは、DRC-MFv2.5の威力と思われる。実際に画質を見ても、画素数が少ないことによる劣化感はほとんど感じなかった。
XSRモードの画質もなかなか優秀だ。拡大画像をよく見比べると人物の顔はわずかに劣化を感じるにも関わらず、イスの背もたれの模様はほとんど劣化していないこと。動いている人物の方がややソフトになっているわけだが、映像全体としての見え方としてはほとんど影響を感じない。BDへの保存をする場合でも、XSRモードまでは十分実用的と言えるだろう。
SRモードでは、画面全体が動くシーンなどで若干ノイズのちらつきが増えてきた。駅伝中継のような厳しい映像が連続する番組はむしろ少ないと言えるが、スポーツ番組などでは多少見づらく感じるかもしれない。ただし、動きの少ない部分での解像度感はまだ劣化感を感じさせない。
そして、LSRモードになると、さすがに映像全体がややソフトになった印象になる。ハイビジョンらしい精細感は維持しているが、ディテールなどはやや劣化している。そして、ライトが消えた暗い舞台などでノイズが周期的に出たり消えたりするような目立ち方をした。これは解像度が甘くなった以上に映像の劣化を感じる部分、暗いシーンの多い映画やドラマでは使いにくい印象だ。
編集はわかりやすく、かつスムーズ
編集機能では、「おまかせチャプター」機能が便利だ。これは、CM部分など、映像に変わり目部分を検出して自動的にチャプターを分割する機能。このため、CM部分のチャプターを選択して、まとめて消去するだけで、CMカット編集が行える。多少気になるのは、チャプターが細かく分かれすぎると感じる点だが、チャプターの結合も手軽に行えるので、さほど手間がかかるということはない。そして、再生中のチャプター分割もきちんと行える。なお、編集画面での画面表示、消去チャプターの選択などはパナソニック、東芝と比較して本機が一番スピーディに動作した。他が遅いということではないが、操作のレスポンスは速いに越したことはなく、使い勝手も良好と感じた。惜しむらくは、i.LINKを使った外部機器からのムーブ(移動)には対応していないこと。「スゴ録」ユーザーでHDDに大事な番組を残している人はBDに保存する手段がないことになる。ユーザーには残念なところだろう。
BDソフトで本機の画質・音質の優れた実力がわかる
MPEG4 AVCの画質は低レートでの画質差でパナソニックにはわずかに及ばない印象だった。しかし、ダイレクト録画やXRモードの画質となると、こちらがわずかに上回る。特にBDソフトの再生では、クオリティの高いパッケージソフトだけに、より緻密なディテール感や暗部までしっかりと再現される映画的な表現の巧みさが際立った。モデルの性格から言っても、最高の画質、最上の音を追求する人にとっては、極めて魅力のあるモデルと言えそうだ。特にプロジェクターでの大画面での再生は、筆者自身いつかじっくりと視聴してみたいと思ったほどだ。このほか、白抜き文字とジャンル別の色分け表示が独得な番組表は情報量も十分で文字も読みやすい。また、HDV規格やAVCHD規格など、豊富なハイビジョンムービーのダビングに対応している点や独自のPSPへの動画転送など、機能的な充実度も高い。ライバルとの価格差を考えてもコストパフォーマンスの高さも大きなポイントと言えそうなモデルだ。