普段忙しい人もお正月は時間が取れ、ゆったり過ごせるもの。テレビを見るのに飽きたら、リラックスした気持ちで芸術を鑑賞して気分転換をはかってみよう。

「宮廷のみやび―近衞家1000年の名宝」

藤原鎌足像 室町時代・15世紀~16世紀 京都・陽明文庫蔵

東京国立博物館 平成館では1月2日~2月24日、陽明文庫のコレクションを中心に近衛家に伝来した作品を一挙に公開する「宮廷のみやび―近衞家1000年の名宝」展を開催する。陽明文庫は、1938年に時の首相近衞文麿(近衞家29代当主)が設立したもので、近衞家が宮廷文化の中心として護り伝えてきた貴重な文書や宝物を収蔵している。

その所蔵品は各所で公開されてきたが、このたび陽明文庫創立70周年を記念し、20万点にもおよぶその所蔵品の全貌を俯瞰するはじめての展覧会を開催するものだ。藤原道長自筆の日記である「御堂関白記」(国宝)、名筆の集大成である「大手鑑」(国宝)、美麗な舶来の唐紙に和漢朗詠集を書写した「倭漢抄」 (国宝)など陽明文庫の所蔵品に加え、皇室に献上された作品や江戸中期の当主で書画、茶道、華道、香道に精通した当時の宮廷文化の第一人者・家熙の作品などを、一度に観賞できるまたとない機会だ。 年のはじめに雅な公家文化の世界を堪能したい。一般1,400円、大学・高校生900円、中学生以下は無料。開館時間は9時30分~17時 (入館は閉館の30分前まで)。休館日は月曜日(ただし月曜日が祝日の場合は開館、翌火曜日休館)。




三渓園で古式ゆかしい日本文化に触れるお正月

正月三が日に、三渓園内にある原三溪の旧宅・鶴翔閣で新春を祝う催し物が行われる。1月1日には琴と尺八による演奏(10時30分~、13時30分~)、2日は1100年も前から伝わる儀式「包丁式」を雅楽の音色にあわせて披露(11時~、14時~)。3日は三溪園では初となる神代神楽を上演する(11時~、14時~)。1902年に原三溪が建てた 広さ290坪に及ぶこの住宅は、主に、楽室棟、茶の間棟、客間棟から構成。鳥瞰すると鶴が飛翔している姿に見えることから"鶴翔閣"と名づけられた。震災、戦災などを経て多くの改変がなされたが、1998年から2000年にかけて修復工事を行い、建築当初の姿に復元された。 鶴翔閣には日本を代表する政治家や文学者が集い、横山大観、下村観山といった日本美術院の画家が創作活動のために滞在したことでも知られ、現在も"利用できる横浜市有形文化財"として活用されている。お正月に古式ゆかしい日本文化に触れてみるのも味わい深い。開園時間は9時~17時(入園は閉園の30分前まで)。入園料金は大人(中学生以上)500円、65歳以上300円、小学生200円、未就学児は無料。

毎年恒例になっている「包丁式」




江戸東京博物館でお正月

江戸東京博物館は2日より開館し、正月らしい楽しいイベントを実施する。1月2日~7日は正月えどはく寄席を開催。各日3回ずつ、筝曲演奏やからくり人形芝居、獅子舞などを披露する。また1月5日には「和算のひみつ」(13時~)として、江戸時代の算数をパズルやおはじき、千代紙などを用いて、遊びながら学ぶというもの。なお、対象は小学校4年生から一般。また、1月2日~6日はクイズラリーが実施され、期間中毎日先着2,000名様に、クイズに答えながら常設展示を楽しく観覧するためのラリーシートが配られる(無料、ただし常設展示観覧料は別途必要)。また特別展「北斎-ヨーロッパを魅了した江戸の絵師-」も好評展示中。また常設展の「北斎漫画」では、2日から6日の土・日・祝日、文化財伝統技術者による版画の摺り実演も行われる。開館時間は1月2日・3日のみ11時~17時30分、1月4日から9時30分~17時30分。特別展「北斎-ヨーロッパを魅了した江戸の絵師-」以外は常設展観覧券で観覧できる。常設展観覧料は一般600円、大学・専門学校生480円、中学(都外)・高校生・65歳以上は300円。なお特別展の観覧料は一般1,300円、大学・専門学校生1,040円、中学(都外)・高校生・65歳以上は650円。

からくり人形芝居の様子




「憧れのヨーロッパ陶磁―マイセン・セーヴル・ミントンとの出会い―」

京都国立博物館では1月5日~3月9日、修好通商条約締結150周年を記念してヨーロッパ陶磁の特別展覧会「憧れのヨーロッパ陶磁―マイセン・セーヴル・ミントンとの出会い―」が開催される。会場には大英帝国が栄えたヴィクトリア女王時代に活躍した著名な工芸デザイナー、クリストファー・ドレッサーが日本へもたらしたイギリス陶磁や、20世紀初めにドイツのフリッツ・ホッホベルクから寄贈されたマイセン・ベルリンなどの作品群。それらに加えて、オランダ/フランス/デンマーク/ハンガリーなど、ヨーロッパ各地の魅力的な焼き物およそ170点が紹介される。また、デザインの源流となった東洋の焼き物や、逆にヨーロッパの影響を受けて作られた日本の陶磁器を通して、洋の東西を超えた文化の相互影響をさぐる。観覧料は一般1,200円、大学・高校生800円、中学・小学生400円。開館時間は9時30分~18時(入館は17時30分まで)。ただし会期中の毎週金曜日は20時まで(入館は17時30分まで)。

色絵薔薇花形カップ ドイツ・マイセン 京都国立博物館蔵