CrossFireのパフォーマンスを試す
ところでX38やX48はDual GPUをサポートしており、実際GeForceなどを2枚挿して4画面とかも可能ではあるが、"連動して"となると現実問題としてCrossFireしか選択肢は残されていない。実際、Radeon HD 3850を2枚装着してからCatalyst Control Panelを開き、チェックを入れるだけでCrossFireが有効になる(Photo19)。そこで、Maximus Formula+QX9650@3.2GHzという環境のまま、SLIを構成すると3D系がどこまで高速になるか、をちょっと試してみた。
まず3DMark06のOverallがグラフ73である。VGAでも25%、UXGAでは70%のスコアアップで、確かに成績が上がることは確認できる。SM2.0 & HDR/SM3.0の結果はグラフ74だ。SM2.0の場合、CrossFiredだとXGAまでほぼフレームレートが一定で推移してしまい、このあたりが低解像度で頭打ちになる原因だろう。その一方HDR/SM3.0では、ちゃんと性能向上が見られており、やはりSM3.0以上ではCrossFireの意味があるとは言える。
ではゲームでは? ということでまずはCall of Juarezの結果(グラフ75)を見ると、素晴らしいの一言。Single構成だとXGAでもプレイするのにちょっと辛い、という感じなのが、CrossFireだと快適そのものである。UXGAでは流石に時々突っかかるが、SXGAあたりまでは実用的だった。
意外に差が無かったのがCRYSiS(グラフ76)。なぜかは不明だが、殆ど性能差が見られなかった。これはFarCry(グラフ77、78)も同じで、高解像度ではメリットが出てくるが低解像度ではむしろオーバーヘッドが多くて性能が下がり気味になる。まぁこれはSLIでも同じ事で、致し方はないのだが。
Lost Planet(グラフ79)を見ると、こちらもかなりスコアが向上しているのが判る。やはりDirectX 10世代ではRadeon HD 3850でも力不足の観は否めず、手軽にパワーアップする方策としてCrossFireは有効であることが判る。
では、World in Conflictは? というと、データなしである……。確かにここまでのスコアだけを見ればCrossFireに意味がある、としたくなるのだが、現状のCrossFireは残念ながら使い物にならない。World in Conflictのデータがないのは、設定画面がこんな事になってしまうからだ(Photo20)。これは別にWorld in Conflictだけの問題ではない。Lost Planetの場合も、最初はいいのだが、すぐにこんな具合になる(Movie01)。ベンチマークを取るのには支障はないが、プレイするのに「問題ない」という人は少ないだろう。DX10のみならず、FarCryとか、3DMark06ですら未だにこうした問題が残っており、現実的にはCrossFireを常用できるのはごく限られたアプリケーションになるだろう。
こうなると、いっそNVIDIA方式でアプリケーションプロファイルを内部に持ち、アプリケーションごとにOn/Offや最適な方法を切り替える方式の方が好ましいという気すらするのだが、そうしたオプションは一切無く、EnableかDisableかの2択しかない。 「せめてもの救いはSLIと異なり、Enable/Disableに再起動を伴わないことだろう」と書いたら「今のSLIは再起動が不要だと思います」と編集氏に指摘されてしまった。ますますもって救いがたい。
今後ATIはマルチGPUコアの方向に進化するといわれているが、そこで仮にCrossFireの技術をそのまま使うとしたら、これは逃げようがなくなってしまう。RADEON HD 3000シリーズで新たに導入されたCrossFire Xの場合、AFR(Alternate Frame Rendering:フレーム毎に利用するGPUを割り振る方式)のみになるとATIの中の人に聞いた覚えがあるので、これがまともに動作してくれるのを祈るばかり。とりあえず、RADEON HD 3870 X2がどの程度まともに動作するのか、非常に興味深いところだ。