-- 今回は日米同時発売ということですが、他国も同様でしょうか?
高田: いえ、日本と米国だけです。欧州版はもう少し後になります。ローカルの開発部隊が置かれているのは日本だけという事情もありますが、早い段階から日本市場のニーズを汲み、プランを立てていた、ということが大きいと思います。
米国とRTMが同時というのは前のバージョン(Office 2004 for Mac)から実施していますが、DVDを焼くといった工程を含め、同じタイミングで店頭に並べる段取りに苦労しています。開発チームのみならず、マーケティングを含めたリリースチームにもだいぶ無理をお願いしています。
-- 同時発売には、米国の意向が働いているのですか?
仲尾: 今回の日米同時発売という試みは、お客さまの要望を反映したという部分が強いです。エンドユーザからすれば、製品の完成日が同じで提供日が違う、ということは納得しがたいでしょうから。
「Microsft Office 2008 for Mac」は日米同時の1月16日に発売 |
工場の立地など難問もありましたが、今回はがんばってクリアしてみようかと。Mac Worldというイベントも重要なタイミングとしてありましたので、これにあわせてみようとなったわけです。
RTMは12月13日を予定していまして、そこから作り始めますから、Mac BU以外のチーム、パッケージの製造を担っている部隊であるとか、倉庫など物流のチームも一丸となり取り組んでいるところです。1カ月に満たない期間で国内すみずみまで行き渡らせなければなりませんので、正直、かなりのチャレンジです。
-- 今回のリリースでは、ユニバーサルアプリケーション化によるパフォーマンスの向上が見込まれます。それ以外に、パフォーマンス向上に寄与する新機能はありますか?
高田: 今度のOffice 2008 for Macでは、新しいグラフィックエンジン「Office Art」を搭載したことにより、描画性能およびパフォーマンスが大幅に向上しています。
具体的には……たとえば、Excel 2008のワークシートが最大で104万8,576行×1万6,384列に拡大、以前は6万5,536行×256列でしたから、トータルのセル数は1,024倍になったわけですが、従来の手法ではパフォーマンスが追いつきません。それをRosettaを介して実行するなど、とんでもない話です。
(PowerPC / Intelで)ネイティブに動作するようになったことで、そのような高負荷の作業も違和感なく処理できるようになっています。
前田: Office 2008 for Macでは機能が相当増えていますから、全体のパフォーマンスは同等……でしょうか。Office 2004をそのままユニバーサルバイナリ化していたのなら、かなり速くなっているのでしょうけれど。
ユニバーサルバイナリ & Leopard対応
-- ユニバーサルバイナリ化してほしいという要望は、Office 2004 for Macの頃にも届いていましたか?
高田: そうですね。他のMacアプリベンダーさんは、どんどんユニバーサル化を進めていらっしゃいましたから、メジャーなMac用アプリケーションとしては取り残されてしまった感があります。
お客さまや社内他部署からの要望はもちろんのこと、我々開発チーム自身も「次は絶対やらなきゃ」という気持ちで取り組んできました。(Intelアーキテクチャへの移行は)Office 2004 for Macの発表後というタイミングでしたので、開発に少々時間がかかってしまった、ということもあります。
仲尾: Intelアーキテクチャへの移行に関する発表は、2005年6月のWWDCでしたか……弊社にしても突然の出来事でした。それに加え、Steve Jobs CEOの基調講演の席上で、Mac BUジェネラルマネージャーだったRoz Ho氏(注: 2007年6月まで。後任はCraig Eisler氏)が、即断即決で「対応する」と。聞いた我々は「えっ!?」という感じで(笑)。ただこれは、それだけコミットしているんだ、という姿勢の現れでもあります。
-- Leopard対応も今回のリリースの目玉なわけですが、一足早くQuick Lookでは対応していますよね?
前田: Leopardに標準装備されているQuick Lookプラグインのうち、WordとExcelに関しては、Appleさんが独自に開発しています。弊社からの情報提供は、特に行っていません。
Open XMLファイルフォーマットに関しては、仕様書が公開されていますから、Appleさんが入手して独自に実装されたのだろうと。「PowerPoint」に関しては、「Keynote」という存在があるためかAppleさんにお作りいただけなかったので(笑)、弊社が開発したうえで提供する予定です。
-- そういえば、ツールパレットから辞書を引けるようになりましたね。Leopardにも日本語辞書は標準装備されていますが。
新しいOfficeでは、ツールパレットから辞書の検索が可能になる |
前田: 辞書ですから、使う側の好みもあると思いますし、Windows版にあるのにMac版にはないとなると、疑問に思うお客さまもいらっしゃるでしょう。Officeを使っている途中、Officeから離れたくないという要望もあるでしょうし。
-- ツールパレットから利用できる辞書機能には、どのような種類がありますか? また、Leopardの「辞書」のように、自前のコンテンツは利用できますか?
前田: 基本的にWindows版Office 2007と同じで、英和・和英・国語・類義語・翻訳で構成されています。類義語辞書を除き、辞書のリソースは基本的にオンライン経由での提供となっているので、コンテンツの追加には対応していません。