感動のDレンジオプティマイザー

前ページでは従来どおりのテストに準じて話をしたが、もう少しα700独自の機能や絵づくりについて突っ込んでみたい。

D-R(Dレンジオプティマイザー)は夢の機能である。シーンに合わせて階調と露出を整えるもので、暗いところは明るく、柔らかいところは硬くというように最適化される。標準の[スタンダード]と[アドバンストオート(D-R+)]があるが、[スタンダード]がガンマカーブを変更することで明るさを整えるのに対し、[アドバンストオート]は部分ごとに補正を行なう。そのため処理に若干時間がかかる。また、α700では[アドバンスト レベル設定]が追加された。これは[アドバンストオート]の補正量を任意に指定できるものと考えていいだろう。

D-Rの設定をいろいろ試してみたのだが、これが実におもしろい。[スタンダード]ではちょっと効果が弱いように感じるが、[アドバンストオート]にすると暗部が俄然生き生きしてくる。それでいて違和感はなく、色を残したまま透明感を増す。[アドバンストレベル設定]の強い側(Lv3~5)は、もはや創作の世界だ。肉眼では見えなかった光が見えてくる。

露出を自分の好みに変えて撮るのは写真の基本だが、D-Rはもうひとつの"露出"に発展するかもしれない。明るい側はそのままに(実はこれもコントロールされているのだが)、中間を明るく表現する。やりすぎれば暗部のしまりもなくなるが、そのあたりは自分で選べばいい。デジタルでないとできない実に楽しい機能だ。

D-Rのメニュー。以下の写真は同じ条件で、D-Rだけ変更して撮影している
DT16-105mm F3.5-5.6 / L+Fine(JPEG) / 16mm(24mm相当) / マニュアル(F11、1/60秒) / ISO:100 / WB:オート / CS:スタンダード

D-R[アドバンスト Lv5]で撮影。完全な日陰にある花が浮かび上がってくる
DT16-105mm F3.5-5.6 / L+Fine(JPEG) / 40mm(60mm相当) / 絞り優先AE(F5.6、1/640秒) / ISO:200 / WB:オート / CS:スタンダード
オリジナル画像はこちら

D-R OFF

D-R スタンダード

D-R アドバンストオート

D-R アドバンスト Lv1

D-R アドバンスト Lv2

D-R アドバンスト Lv3

D-R アドバンスト Lv4

D-R アドバンスト Lv5

コントラストとゾーン設定

前ページで触れた[ゾーン設定]。マニュアルを読むと、プラス側にすると白飛びを押さえ、マイナス側では黒つぶれを和らげると書かれているが、試したところプラス側ではハイキーに、マイナスではローキーになるように感じた。試撮したシーンのコントラストがまだ低いのだろうか。

いずれにしても、この[ゾーン設定]を使うとコントラストの調整ができなくなることを見ても、ガンマカーブをいじっていることは間違いないだろう。

クリエイティブスタイルの[コントラスト]と[ゾーン設定]を変化させて撮影したのが次の写真
DT16-105mm F3.5-5.6 / L+Fine(JPEG) / 75mm(113mm相当) / マニュアル(F11、1/3秒) / ISO:100 / WB:オート / CS:スタンダード

標準状態(コントラスト±0)

コントラスト +3

コントラスト -3

ゾーン設定 +1

ゾーン設定 -1

透明感とリアリティの共存

α700の絵だが、透明感とともに印象的なのは、リアリティである。本物よりも本物のように見える。次ページの作例に柿の写真があるが、これを最初に自分のモニターで開いたときには驚いた。思わず手を伸ばして触りそうになったほどだ。

このリアリティ、実はα100でもまれに見ることがある。しかしそのためにはものすごく条件が揃わなければならない。透過光で、被写体そのもののコントラストがはっきりしていて……、といった具合。しかしα700ではけっこうな確率でこのリアリティが手に入る。

また、α100は色乗りがいいことも特長だ。例えば夕焼け。α100で夕焼けを撮ると、思わず引いてしまうぐらい色を乗せてくる。α700はそこまでは色を乗せてはこない。もちろん色乗りが悪いわけではないが、その上で透明感であるとか、リアリティだとか、写真として次のステップに進んだように思う。それはとてもワクワクさせてくれる。

もうひとつ、α700は夜の撮影が楽しい。あやしい人と間違えられそうなのであまりお薦めできないが、夜のショーウインドウや走り去る自動車など、ちょっとした光がとてもキレイに撮影できるのだ。ほかのカメラでもコントラストの強いシーンはかっこよく撮れるものなので説明が難しいのだが、やはり透明感があるということだろう。

透明感のヒントをひとつ見つけた。明度の持たせ方が関係しているのではないか。前ページで「ダイナミック」としたグラフを載せたが、過去に行なった同種のテスト、EOS 40DDMC-L10E-510などと比較してもらえばわかるように、α700はまったく違うグラフとなる。普通は暗い側と明るい側で閉じたようなカーブになるが、α700は明るい側にむけて開きっぱなしなのだ。どういうことかというと、色の付いた部分は相対的に明るくならないことを意味する。つまり葉のすき間から見える光が強調されたり、全体に明るくても色が乗っていればアンダーになる、つまり色の付いた部分は色乗りがよくなることで、結果として透明感を感じるのではないか。あくまで推測だが。

もうしそうだとして、恐ろしいのは、この特性ですべてのシーンをフォローできるのか? 場合によっては破綻しないのか? ということだ。幸いなことに、今回の使用期間ではそういったシーンには出会わなかった。

α700で撮影すると、普段の風景が違って見える。よく使われる言い回しだが、それが特定のプロカメラマンのテクニックやノウハウによるものではなく、α700なら誰でも経験できるのがすごい。チャンスがあればぜひ試してほしいと思う。

クリエイティブスタイルを変更して撮影。これは[スタンダード]。以下、設定は同じ
DT16-105mm F3.5-5.6 / L+Fine(JPEG) / 28mm(42mm相当) / マニュアル(F6.3、1/60秒) / ISO:100 / WB:オート

クリエイティブスタイル ビビッド

クリエイティブスタイル ニュートラル

クリエイティブスタイル ポートレート

クリエイティブスタイル 風景

クリエイティブスタイル 白黒

クリエイティブスタイルを変更して夕景を撮影。これは[ニュートラル]。以下、設定は同じ
DT16-105mm F3.5-5.6 / L+Fine(JPEG) / 60mm(90mm相当) / プログラムAE(F5.6、1/100秒) / ISO:200 / WB:オート

クリエイティブスタイル スタンダード

クリエイティブスタイル ビビット

クリエイティブスタイル 風景

クリエイティブスタイル 夕景

間違えて[夕景]で撮影したら、午前中の窓際の光なのに、それらしい色になってしまった
DT16-105mm F3.5-5.6 / L+Fine(JPEG) / 60mm(90mm相当) / プログラムAE(F5.6、1/15秒) / ISO:800 / WB:オート / CS:夕景