必要にして十分なオートフォーカス性能
α700のオートフォーカスの速度を調べてみた。EV5の明るさで平均1.3秒、EV1で1.8秒だった。いつものようにシャッターを押して撮影されるまでの時間なので、レリーズタイムラグなども含まれている。先日測定したE-510の平均1.1秒(EV5)やDMC-L10の平均1.0秒よりも少し遅いが、平均的な速さといえる。EV1+斜線ターゲットでシャッターが切れないのも、よくあることなので悲観することはない。
ちなみにフォーカスエリアはカメラ任せで選択される[ワイド]と、中央のみが使われる[中央固定]、11個のAFポイントから任意に選択でできる[ローカル]の3種。切り換えはクイックナビで行なえるのでとても便利。[ローカル]でのAFポイントの移動はマルチセレクターで行なうが、セレクターを押し込めばAFポイントはどこにあっても中央に戻ってくる。
オートフォーカスのチャート。写真のようなターゲットを用意し、レリーズから撮影までの時間を読み取った。撮影距離は約1142cm |
十分な解像力と見やすいファインダー
解像力は1800TV本強程度だった。1220万画素ならもう少し解像してほしいところではあるが、過度にシャープネスは上げてはいないようで、好感がもてる。周辺での像の流れはそこそこあるが、周辺が暗くなる傾向は少なく、全体にフラットに光を回している。比較的穏やかな特性のレンズのようだ。
光学ファインダーの視野もチェックした。実測で約20.6度(対角)と、これも標準的なところ。しかし周辺まで光量落ちが比較的少なく、全体に見やすい。ただ、測距点の形状が中央は四角なのでいいものの、それ以外が細い線のため見分けづらいことがあった。もう少し太くするなど、見つけやすくしてほしいところだ。
簡単だが手ブレ補正もチェックした。手ブレ補正オフの状態ではシャッター速度1/30~1/15秒あたりで手ぶれが起り始めるようなシーンで、手ブレ補正をオンにすると1/4~1/2秒までがんばってくれた。実効で3段程度の働きはあるようだ。かなり効果があるとしたい。
解像力チャートを撮影した。撮影距離は127cm |
ファインダー内の像。実測では20.6度の視野角だったが、計算上では視野はもう少し広いはず。撮影はアイカップに別のカメラを付けて撮影しているので、形状などが関係したかもしれない |
手ブレの状態をチェック。これは手ブレ補正をオフで撮影 |
左と同じ状態で、手ブレ補正オンにして撮影。ちゃんと像が止まっている。だいたい3段程度の効果が確認できた |
ISOオートが実用になる低ノイズ
高感度時のノイズについては、ISO800までは全くそれらしいものは見られず、ISO1600で画面が少しざらつきはじめる。ISO3200では若干の色ノイズが発生し、コントラストも下がり、ISO6400ではかなり色ノイズが厳しくなる、という状態だった。しかし全体的にみればノイズは十分に抑えられていて、ISO1600、場合によってはISO3200でも常用できそうだ。
またα700の撮影メニューには[高感度ノイズリダクション]があり、ISO1600以上でのノイズ減少効果を3段階で調整できる。これも試してみたのだが、[強]にすると少し色ノイズが減る程度で、全体に変化は少なかった。[標準]のままでかまわないだろう。この高感度時のノイズリダクション機能は、最近は多くのカメラが採用している。しかしカメラによってはレタッチソフトでボカシをかけただけのような、ゆるい画像になることもある。α700はそれを嫌って効果を抑えているのかもしれない。これはこれでいいと思う。後処理なら自分でいくらでもできるのだから。
ついでながら、α700はISOオート、つまり撮像感度をカメラ任せにもできる。この場合、最低感度と最高感度が指定できるのだが、最低感度はISO200となっている。ISO100まで下げないのが不思議だが、ISO100とISO200で画質の違いはないということなのだろう。
光の色を残すホワイトバランス
ホワイトバランスはスタジオ撮影を別にして、すべてオートで撮影したが、ほとんどの場合、それで色がおかしくなるようなことはなかった。非常によくできている。といっても、完全に補正してしまうホワイトバランスではなく、わざと光の色を残す傾向にあるようだ。普通に日陰は青く、夕焼けは赤く写る。これがα700独特の絵づくりのベースになっている。
このクラスになると、ホワイトバランスの微調整が可能なものが多いが、α700は緑←→マゼンタの調整は出来ず、赤(アンバー)←→青の一次元的な調整のみ。オートホワイトバランスには調整機能そのものがない。それだけホワイトバランスに自信があるのだろう。
ホワイトバランスの変化を見る |
使いこなすまでに時間がかかるクリエイティブスタイル
カラー調整機構のクリエイティブスタイルは非常に種類が多い。メニューに現れるのは7種類だが、後半の3種類は入れ換えることができる。合計するとカラーが12種類、モノクロが2種類もあるのだ。さすがにこれだけあると1週間やそこらの試用で全てを把握するのは不可能だが、ざっと見たところ、それぞれの色の変化はとても大きい。モードひとつでまるで違う絵になる。それでいて、どのモードでもCGのようなつまらない絵にはならない。
標準的な3つのモードでいえば、[スタンダード]と[ビビッド]からしてぜんぜん違う。単に彩度を上げる手法ではなく、[ビビッド]は[スタンダード]に比べて赤に青が乗り、青の明度が上がる。全体に見ると"極端"な感じとなり、結果としてビビッドになっている。[ニュートラル]は各色のレベルを中央に寄せている。つまり彩度を下げているのだが、かといって濁った感じにはならず、透明感を保っており、おもしろい。
難点をいうなら、カラー調整を行なうクリエイティブスタイルに、[AdobeRGB]を入れるのはどうだろう。絵づくりと色空間はまったく別物だ。これはα100も同様なのだが、"AdobeRGBでビビットに撮りたい"という場合には、どう設定すればいいのだろう。
クリエイティブスタイルの下段3種類は入れ換え可能だが、それだけでなく、調整可能な項目が増える。[コントラスト][彩度][シャープネス]はどれでも調整できるが、下3種はさらに[明度]と[ゾーン設定]が調整可能になる。また、入れ換え可能な種類には[スタンダード]や[ビビッド]なども含まれている。つまり、上にある[スタンダード]は標準のままにしておき、下段の[スタンダード]は好みに合わせて調整しておく、といった使い方も可能になるわけだ。
クリエイティブスタイルを変えながら、彩度の高い被写体を撮影し、色の貼り付きをチェックした。○で囲った部分のヒストグラムが次の図 |