省電力性は高いがボード全体の冷却が重要に

3D描画性能に引き続き、製造プロセスが65nm化されたことで消費電力は一体どう変化したかをチェックしてみよう。今回テストしたグラフィックスカード各々について、アイドル時および3D描画時(3DMark06のGame Test2)の消費電力を「ワットチェッカー」で計測。目視で安定点を計測したのが下のグラフとなる。

ハイエンドのGeForce 8800 GTXよりも消費電力が少ないのはさておき、性能的には格下となるGeForce 8800 GTSと比較しても、十分驚きに値する省電力化に成功していることがわかる。アイドル、3D描画時ともに20W程度下がっているのに、性能は段違いに良いというのは見逃せない結果である。さらに1スロット分しか占有しないということを考えれば、電源ユニット選びやパーツ構成などでもかなり融通の利くグラフィックスカードといえそうだ。

しかし、ヒートシンクが薄型になったことで、グラフィックスカード全体としての発熱量はむしろ上がったような印象を受ける。GeForce 8800 GTXであろうと8800 GTであろうと、3D描画中にGPUの裏面がアツアツになるのは同じなのだが、GeForce 8800 GTの場合は基板全体が熱を持つようになっている。6ピンの補助電源コネクタの位置まで伸びたカバーのせいかもしれないが、意識的にケース前面のファンの風がグラフィックスカードに当てるようにしないとやや不安になる。GeForce 8800 GTで30分程度ゲームを楽しんだ後、放射温度計でGPU裏面の温度を測定したところ、約70℃にまで達していた。2スロット占有型でも構わないから、もう少しグラフィックスカード全体が冷えるクーラーを搭載したバリエーションが欲しいところである。

今すぐ買いか? それとも待ちか?

最後の発熱の件に目をつぶれば、GeForce 8800 GTは従来の8800系ボードが霞むほどのコストパフォーマンスを見せつけてくれる。今回テストしたXFX「PV-T88P-YDFP」の実勢価格が3万5千円前後であるのに対し、GeForce 8800 GTSは320MB版でも4万円前後。GeForce 8800 GTは、8800 GTSの存在意義が根底から覆るようなインパクトのある価格設定となっている。コストパフォーマンスという点で低予算ゲーマーの支持を受けているミドルレンジのGeForce 8600 GTSが2万円台前半ということを考えれば、プラス1万円程度でハイエンドクラスにジャンプアップできるGeForce 8800 GTの存在意義は非常に高いのだ!

しかし、今すぐ買いか? と問われるとちょっと悩んでしまう材料もある。というのも、GeForce 8800 GTで採用されている65nmプロセスルールが順調になれば、当然、GeForce 8800 GTSなどのラインナップにも影響が出てくると考えられるからだ。GeForce 8600シリーズの場合、「GTS」は「GT」の上位型番となっている。つまり、GeForce 8800 GTが「GT」である以上、その上位版として、G92ベースのGeForce 8800 GTS、あるいはそれに相当するラインナップが登場してくる可能性は決して否定できないのである。さらに、DirectX 10.1の存在も無視できないポイントとなってくるだろう。

とはいえ、ミドルレンジクラスのグラフィックスカードに1万円から1万5千円の追加投資で入手できるGeForce 8800 GTの存在は、コストパフォーマンスの観点から考えると非常に有意義といえる。DirectX 10対応の最新ゲームが楽しめるパフォーマンスに加え、第2世代のPure Video HDをサポートすることで、動画再生などにも強みを発揮する。さらに、PCI Express 2.0への対応も忘れてはいけないポイントである。発熱の問題さえクリアできれば、という条件はつくものの、GeForce 8800 GTは、今後のグラフィックスカード選びに大きな影響を与えるGPUといえそうだ。