展示されていたFEDディスプレイ試作機の主要スペックは以下の通り。

画面サイズ 19.2インチ
解像度 1280×720ドット
輝度 400cd/m^2
コントラスト 20000:1以上
最大同時発色 1677万色(RGB:888)
寸法 W500xH350xD55(mm)

400cd/m^2という輝度は現行の液晶テレビよりは暗く、平均的なPC向け液晶ディスプレイよりは明るいと言った程度。ただし、コントラスト2万:1以上、は液晶を圧倒し、プラズマに優るとも劣らぬレベル。これは暗部の沈み込みがあるからこそ実現できている性能だ。担当者によれば10万:1も実現できるのだが、計測機器がないために具体的な値が示せないのだという。

映像の表示方式は、液晶のような面書き込みではなく走査線単位の書き込みになる。

一本の電子ビームがでZ型のジグザグ軌跡で走査するのではなく、瞬間的に1本分の走査線が描かれるようなイメージ。面描き込みも技術的に出来なくはないが、消費電力の削減、画素駆動周辺回路の単純化が行えるためにこうした設計になっているとのこと。ここで示している実写写真に帯状の跡が見えるのはそのため。

現在の試作機は、前述の通り、約19インチの、1280×720ドット解像度だが、量産モデルでは26インチクラスで1920×1080ドットのフルHD解像度を実現する計画となっている。

FED試作機には1280×960ドットの4:3パネルもある。写真はこれを縦置きにして2枚配置した「1920×1080ドットパネルのイメージモデル」の展示も行っていた(写真右側)

実際の画質だが、まず感動するのがダイナミックレンジの高さ。明暗の格差が鋭く映像フレームに強烈な立体感と遠近感が感じられる。また、動画性能も優秀で、残像感は感じられない。展示では、一般的な液晶ディスプレイを並べて横スクロールのテロップを表示して残像の少なさをアピールしていたが、実際に、ブラウン管のレスポンスに極めて近い動きが実現できていた。

液晶(左)とFED(右)の比較。動きのあるシーンでの残像の少なさはFEDが圧倒的

階調に関しては文句はないものの、若干だが色ダイナミックレンジについてはもう少しチューニングの必要性を感じたが、「まだ試作段階なので」(担当者)とのことで、このあたりは改良を重ねて洗練させていくことになるようだ。

展示では、線書き込みの高速描画性能と、高リフレッシュレート対応性能をアピールするために、プレイステーション3用「グランツーリスモ5プロローグ」の240fpsモードでオフラインレンダリングさせた1080p映像を、実際にFEDにて240fps表示を行っていた。これはFETがソニー系列ということもあり、SCEのファーストパーティであるポリフォニーデジタルとの関係もよいことから、今回のデモのために特別に用意してもらった映像だとのこと。

「グランツーリスモ5プロローグ」の240fpsプリレンダームービーを公開

画の映り方に基本的な違いはなかったものの、横にカメラがパンするようなフレームや、映像フレーム内を目線でおうようなときの見え方が、残像が少なく、かなり現実世界に近い見え方をしていた。

FEDとしては世界初のリフレッシュレート240Hz表示を実現したデモ

当初は、やはり、民生向けテレビ製品の投入は考えおらず、プロフェッショナル向けの製品になるとのこと。これは、まだまだ、FEDは、液晶対プラズマの薄型テレビの低価格戦争に挑むほどの製造設備投資ができないため。最初の量産&発売の開始予定は2年後くらいの2009年くらいを予定しており、月産1000~5000台程度を見積もっているという。

価格は「全く予測できない」(担当書)としつつも、「一般的なブラウン管ベースの業務用マスターモニターと競合できる価格に設定したい」(担当者)とのことなので、ざっと150万円~200万円といった価格レンジになると思われる。安価な民生用モデルの登場も期待したいところだが、ソニーは次世代フラットテレビは有機ELを本命視している節があり、FEDが短期的にメインストリームに降りてくる可能性は低そう。いずれにせよ、FEDの実際の発売開始には期待して見守りたいところだ。

FEDは当面、放送業界向けのマスターモニター製品(マスモニ)として訴求されていく予定。写真はブラウン管ベースのマスモニとの比較デモの様子