顔認識機能は、レンズから入ってきたデジタル画像から顔の輪郭、目、鼻、口などのパーツの距離感覚などの情報をカメラ内で判断して、人の顔と認識するようだ。

どのような条件で顔と認識されるのか?

顔認識機能を独立した専用ボタンでONにするのが、S50(ニコン)、μ780(オリンパス)、F40fd(富士フイルム)の3モデル。メニューから設定するのが、IXY810(キヤノン)、T100(ソニー)、EX-Z1200(カシオ)。A30(ペンタックス)はシーンモードで「ポートレートモード」「キッズモード」を選択すると作動するようになっている。

実際に顔認識機能をONにして顔にカメラを向けると、ほとんどはそのままで検出枠が顔の周りに出てくる。μ780だけがAF枠を兼用しており、通常の状態ではAF枠は中央にあり、シャッターボタンを半押しするとAF枠が顔に移動する仕組みだ。

検出枠が表示されていても、撮影距離が短すぎたり被写体が動いたりしているとピントが合わないときもある。ピントが合っているかは、シャッターボタンを半押し(フォーカスロック)すればわかるが、ピントが合わない場合は枠が赤くなるものが多い。検出枠が出る様子を撮影した動画を最後のページで紹介しているので、参考にして欲しい。カメラはF40fdを使用している。

近くの人が優先される顔認識

さて、顔を認識すると枠が出て追いかける様はわかったが、メーカーによって仕組みは違うのだろうか? また、目や口などの顔のパーツ情報が重要だと考えられるが、肌の色はどうなのだろうか? 新しい機能だけあってわからないことも多い。このあたりをメーカーに聞いてみることにした。質問は以下の通り。また、それぞれのカメラでの切り換えメニューや動作時の画面を合わせて掲載している。

(1)顔認識システムの原理は? (2)どのような条件で「顔」と認識されるのか? (3)肌の色の違う外国の人も検出は可能か? (4)被写体として人が複数いる場合は、ピントはどこに合いやすいか?

キヤノン
(1)(2) 開発上の機密として公表しておりません。何卒ご容赦くださいますよう宜しくお願い致します。 (3) 検出できます。 (4) どちらかと言えば、手前にいる人の顔にピントが合いやすい傾向にあります。ただし、一概に手前ばかりにピントが合うというわけではなく、例えば画面の中央にいる人物にピントを合わせようとするなど、カメラ側で主被写体と想定される人物に自動でピントを合わせます。

IXY810:メニュー画面からAF設定を「顔優先」に選ぶと顔認識がオンになる

IXY810:画面に対して、顔の大きさが小さくても検出した。顔を検出すると白い検出枠が追従していく。フォーカスが合うと緑枠に変わる。バービー人形のみ顔とした

ニコン

(1)(2) 詳しい原理は申し上げられませんが、撮像素子から得られた画像に独自の認識処理をすることで、顔を構成するパーツなどから顔と判断できる画像を取り出すことができます。この処理により得られた画像から顔の位置を判断しています。 (3) 顔の色についての情報は使っていませんので、肌の色の違う外国の方でも認識は可能です。 (4) 顔が大きく写っていれば手前にいると判断され、そちらを優先して、ピントを合わせます。

S50:上面のフェイスクリアーボタンで顔認識をONにする

S50:フェイスクリアー機能時には左上にアイコンが表示される。主要被写体が2重枠。フォーカスロックすると緑枠に変わり、ピントが合わないと赤くなる

S50:フェイスクリアー機能の設定から、ポートレート効果の「標準」「明るめ」「ソフト」が選択できる

S50:猿のおもちゃの顔も認識した

ペンタックス

(1)(2) 公開しておりません。 (3) 検出できます。 (4) いちばん大きく顔を検出された人が近くにいると判断してピントを合わせます。※A30の顔検出は、FotoNation社の「フェイストラッカー」を採用しています。

A30:「ポートレートモード」と「キッズモード」時に顔を認識する

A30:顔を認識すると正方形の黄色の検出枠が表示される。ポートレートモードではピントが合うとそのまま緑色になる。人形、豚の貯金箱、ブースカの頭までが顔と認識された。黒い点が2つ並んでいると顔と認識するのだろうか?

A30:キッズモードでは顔を認識したあと、シャッターを半押しすると緑色のAF追尾用の緑色のカーソルに変わり、動きに追従する

オリンパス
(1)~(4) 顔検出機能のメカニズムについては公表しておりませんので、ご了承ください。

μ780:フェイスマークが付いた消去ボタンで顔認識機能の設定を行なう

μ780:といっても、設定は「オン」と「オフ」のふたつだけ

μ780:顔検出逆光補正機能では、左上にアイコンが表示される。シャッターボタンを半押しするとAF枠が顔に移動する

富士フイルム

(1) 画像の中から人間の顔を判別する技術です。顔を判断するための辞書データをカメラ内部に持っていて、そのデータと比較することで人間の顔とそうでないものを判別しています。 (2) 目、鼻、口などのすべての情報を総合的に判断しています。特に顔の中のコントラストなどの情報を利用しています。 (3) 検出します。 (4) 数人いる場合はより画面中央に近い方にピントが合いやすいです。

F40fd:顔キレイナビボタンで設定

F40fd:左上に「顔キレイナビ」のアイコンが表示される。主要被写体が緑枠、その他の被写体は白枠で表示される。素焼きの人形の顔も検出した

F40fd:猿の顔も検出した。フォーカスロックすると緑の内側の枠が黄色に変わる

ソニー

(1) 高速・高精度な顔検出・追従技術を駆使し、ピント・露出・フラッシュ制御からホワイトバランス、カラーまでキレイな顔を撮るために、自動で最適化します。 (2) 人間の目・鼻・口・輪郭や肌の色などから人間の顔を認識します。 (3) はい、可能です。 (4) 手前の人物の方がピントが合いやすくなります。複数の人物を撮影する場合、自動的に最優先被写体(主役)を判断し、それに合わせて適正な補正を行います。誰を最優先被写体として判断するかは、顔の大きさやモニターの中央に近いことなどから判断します。結果として、手前の人物にピントが合いやすくなります。

T100:メニューから顔検出をONにする

T100:左上にアイコンが表示される。バービー人形のみ検出した。白枠時に自動追尾し、フォーカスロックすると緑枠に変わる

カシオ

(1) 沖電気のソフトウェア「FSE」のバージョン3を搭載しております。 (2) 目・眉・口などの特徴点を1枚の画像から検出します。また、特徴点の位置は顔の動きに合わせてリアルタイムに追跡します。 (3) はい。検出可能です。 (4) 比較的中心寄り、比較的距離が近くて大きな顔に合わせるようになっております。登録した顔を優先してピント・露出を合せる機能も搭載しております。

EX-Z1200:顔を認識すると撮影時の優先順位に合わせて白(低)、黄(中)、緑(高)に色分けされて表示される

EX-Z1200:顔認識画面。「ファミリー優先モード」は顔を登録し、優先して撮影される。さらに「スピード優先モード」「登録優先モード」が選べる

EX-Z1200:ファミリー登録の設定画面。顔を輪郭に合わせて登録。顔と認識しない被写体は登録できない。ブースカは認識しなかった

EX-Z1200:登録人数は6人まで。同人物を複数登録すると精度が上がる