性能面では残念な比較に終わったが、機能や使用面での優位性は確かに存在する。
その1つは搭載可能なメモリ量の上限が3GBから4GBに増加されたことだ。従来はチップセットの制約から3GB以上は搭載できず、2GBのSO-DIMMを2枚装備すると1GBが認識されないものとなっていた。それが今回からは晴れて4GB全てが利用可能となる。
Mac OS X単体の利用ならば通常は1GB、少々ヘビーな使い方でも2GBあれば十分だが、PallarelsやVMware Fusionなどの仮想化ソフトウェアを利用した場合、その上で動くOSのためのメモリがさらに必要になる。Mac OS XをホストOS、WindowsをゲストOSとして利用するとなると2GBでも少々心許ない。そういったとき、1GBの搭載可能メモリの差は決して小さくはない。
もう1つの、そしてもっとも大きな違いは液晶の解像度だ。PowerBook G4と初代のMacBook Pro 17インチまでは1440x900ピクセルだったのが、2代目となる前モデル(MA611J/A)で1680x1050ピクセルに、そして今回の新モデル(MA897J/A)では1920x1200ピクセルまで高精細化された。PowerBookから比べれば面積比1.7倍、前モデル(MA611J/A)から比べても1.3倍だ(図2)。ログインパネルの比較の写真をぱっと見ただけでログインパネルの「小ささ」がすぐに分かるだろう。
図2 オプション選択時の新モデル(MA897J/A)の解像度は1920x1200ピクセル。前モデル(MA611J/A)の面積比1.3倍、PowerBookや初代MacBook Proに比べれば1.7倍にもおよぶ |
1920x1200ピクセルもあると、フルHDの動画をそのまま再生させることも可能であり、そうでなくても従来Excelシート2ページ半しか表示できなかったのが、新モデル(MA897J/A)ではまるまる3枚表示できる。この差は大きい。
実際に使ってみたところ、目を引くのは画面上部にあるメニューバーの「薄さ」だ。バーというよりラインに感じられる。ただでさえ沢山のウィンドウを表示できる17インチの液晶だが、高精細化されたことでさらに沢山の情報が表示されることも素晴らしい。
実際に使うと、画面上部にあるメニューバーの「薄さ」に目がいく |
OS付属のメールクライアントであるMailはOutlook Expressと同じく3ペイン構造で、メインウィンドウは大きくやや場所を取るが、それでも画面半分に広げれば十分に快適だ。さらに別のアプリケーションをもう半分に広げてメールを見ながらWebブラウジングなどが楽々行える。先に挙げたようにデスクトップマシンで作られた広大なExcelのシートでもスクロールせず画面に収めることができる。これは非常に快適であり、1度味わったら忘れられないものがある。
一方、画面サイズは固定のまま解像度を上げたということは、dpiが大きくなる、画面が細かくなったということだ。小さくなった文字を見づらいと感じる人もあるだろう。
ただ、これはMacBook Proの問題というよりは、解像度に依存するUIの作り方の問題であろう。高解像度でUIの要素が小さく扱いにくくなるのはMac OS XのみならずWindowsでもあるGUI共通の問題である。
これに対して、Macでは解像度非依存UIを推進しており、ベクターベースの描画、ビットマップの画像であるアイコンなどはマルチサイズを用意し、表示側で適切なサイズを選択したり動的に生成できるようにすることを開発者に対して推奨している。次期Mac OS XであるLeopardで解像度非依存UIが実現するのか、それともその次のメジャーリリースまで待ちなのかはまだ明確ではないが、こうした高精細になるにつれ UI の要素が小さく見づらくなるという問題は解像度非依存UIによって解決されるだろう。
解像度非依存UIが実現した場合、MacBook Proの持つ高精細な液晶は「より沢山の情報」を表示するだけではなく、同じサイズの文字をより沢山の画素(ピクセル)で表現する、より美しい画面表示が可能となる。どちらにしても、解像度に関しては、大きいことがいいことなのだ。
なお、この高解像度液晶はBTOによるオプションとなっており、通常は前モデル(MA611J/A)と同じ、1680x1050ピクセルの液晶になる。この解像度でも十分に広いのだが、1920x1200ピクセルの解像度へのアップグレード費用はわずか12,810円に過ぎない。この価格差なら選択しない理由はないだろう。
あと、細かい点だが光学ドライブの読み込み性能が若干向上している(表6)。
表6 光学ドライブの読み込み性能
メディア | 読み取り速度 | 書き込み速度 |
DVD+/- R | 8x (CAV)(*1) 前モデル(MA611J/A)では6x |
8x (CAV) 前モデルでは8x (ZCLV)(*2) |
---|---|---|
DVD+R DL | 6x (CAV) 前モデル(MA611J/A)では4x (CAV) |
4x (ZCLV) |
DVD-ROM (単層) | 8x (CAV) | - |
DVD-ROM DL (二層) | 6x (CAV) | - |
DVD+RW | 8x (CAV) 前モデル(MA611J/A)では6x (CAV) |
8x (ZCLV) |
DVD-RW | 6x (CAV) | 6x (ZCLV) |
CD-R | 24x (CAV) | 24x (ZCLV) |
CD-RW | 24x (CAV) | 16x (ZCLV) |
CD-ROM | 24x (CAV) | - |
*1 CAV
CAVはメディアの回転速度が常に一定のもの。機構は容易だが内周と外周で記憶密度が変わってしまうという問題がある。逆に、回転数を可変にし、つねに記憶密度を一定にするものを CLV という。CLV は記憶密度に優れるが、シークにより読み取る周が変わる度に大幅な回転速度の変更を行わなければならず、制御が大変な上シーク速度に劣るという問題がある。
*2 ZCLV
ZCLV は CLV の一種で、メディアをゾーンといういくつかの輪に分け、輪ごとに記憶密度を一定に保つもの。ゾーンで区分けすることで内周と外周での回転速度の差を小さくすることができ、記憶密度とシーク速度を両立するもの。