ではもう少し仔細に部品を見てゆくことにしたい。まずはマザーボード(Photo10)だ。

Photo10: マザーボード中央部。右上に見えている細長いものがFlash Memoryの一部

中央に鎮座するのは、言うまでもなくARMである。型番を見ると

  • "339S0030 ARM"
  • "8900B 0722"
  • "NODTAMV2"
  • "K4X1G153PC-XGC3"
  • "ECD263GD 719"

の5つが記されている。実はこの4行目で、Samsung製であることが分かる。というのは、これはSamsungのMobile DDR-SDRAMの型番だからだ。KはMemory、4はDRAM、XはMobile DDR-SDRAM、続く1GはCapacityで1Gbit、15はOrganizationでx16の意味、3はBank数でこの場合4Bankといった具合になっている。

現在SamsungはMobile DDR-SDRAMについては512Mbit品までしかラインナップしていないが、要するにこれを1Gbit化した製品がこの中に入っているという話だ。ここから、このチップはARMコアのCPUにMobile DDR-SDRAMを重ねたMCP(Multi-Chip Package)であると推察される。

どんなARMコアか?

問題はここにどんなARMコアが搭載されているかだが、"339S0030"というのは恐らく勝手にAppleが付けた型番なのであって、これで調べてもさっぱり分からない。実際こちらを見ると、ARM7からCortex-A8まで好きなコアを製造できる能力(とライセンス)を持っているからだ。

ただこれとは別にSamsungは携帯電話向けにApplication Processorをすでに提供している。それがこちらで、開発の容易さを考えると一からASICを起こすよりも(Appleの開発に投じる資金力を考えれば、ASICを起こすことそのものは簡単だが、開発期間が長くなるのは否めない)、すでにあるApplication Processorを使う方が自然というのはある種当然である。

世代を考えればARM9というのはありえない(し、性能も低すぎる)し、Cortex-A8ベースだと開発時期に間に合ったかどうか微妙なところ。そこでARM 1176ベースと考えるのが自然だし、その場合の動作周波数が533/677MHzとなっているところから、(世間一般に流れている)600MHzという動作周波数が出てきたものと想像される。

この条件を満たす製品は同社のS3C6400(S3C640という型番が流れているが、これはTypo)となる。製品の詳細はこちらの12ページ目に詳しいが、ARM 1176JZF-Sをベースに様々なI/FとLCDコントローラ、Camera I/Fなどを搭載しており、今回の構成にはぴったりフィットする。さらにMCPのオプションとしてPOP(Package on Package)が用意されているという話もあり、まさしく今回はこれを使って1GbitのMobile DDR-SDRAMを搭載したと考えるのが自然だろう。

その左上にもう1つ鎮座するAppleの"338S0459"。パッケージの形状などを考えると、これはInfineonのPMB6811もしくはこれをベースにした独自品ではないかと想像される。このチップはEDGE対応携帯電話のRF段やベースバンドの電源管理、さらにはBluetoothの電源制御も行う優れものである。今回ベースバンドなどにInfineonのチップを採用したことで、電源管理もこれに対応したものが必要になったと想像される。

ちなみにPMB6811などの簡単なスペックはこちらの2ページ目にあるが、アプリケーションプロセッサとはI2Cで接続する構造だから、Infineon以外のアプリケーションプロセッサでも問題はないだろう。

もっとも電源管理はこれだけ、という訳ではないようだ。アプリケーションプロセッサの右にはLinear TechnologyのLTC4066が鎮座している。こちらはUSBの電源管理とLi-Ionバッテリーチャージャー用ダイオードを兼ねた製品で、USBに関してはこちらの管理下にあると見られる。