キヤノンのプロ機としては初の「ライブビュー」機能
EOS-1D Mark IIIでは、液晶モニターに撮影前の像をリアルタイムで写す「ライブビュー」が可能になった。キヤノン製一眼レフとしては、天体撮影向けの「EOS 20Da」に続いての採用だが、20Daはちょっと特別なカメラなので、 Mark IIIが初の本格採用としていいだろう。
ライブビューは使わないというカメラマンも少なくない。実際、望遠や動いているものの撮影となると、ライブビューはまず使い物にならない。撮影者とカメラが一体になる光学ファインダーのほうが有利だ。しかしスタジオでの静物撮影やマクロ撮影ならライブビューがとても便利。大判カメラのように両目でフレームの隅まで確認できる。メーカーも"スタジオで効果を発揮"と謳っているほどだ。
富士フイルムの「S5 Pro」と同じように、ライブビュー時はMF(マニュアルフォーカス)のみとなる。しかしスタジオやマクロ撮影用と考えれば、AFが使えないのはそれほど欠点にはならない。ライブビューで非常に便利だったのが、大型の液晶モニターと拡大表示機能だ。モニターが見やすく、さらにピント部分を10倍まで拡大できる。ピントの山もつかみやすい。
ライブビューでの通常表示では、露出にかかわらず見やすい明るさに調整されるが、常に露出に応じた明るさに設定することもできる(C.Fn IV-16)。もちろん絞り込みボタンで被写界深度も確認できる。また、ライブビュー時はリレーズ時の音が小さくなる。これはミラーが動かないため(シャッターのみ動作)とのこと。
仕事でライブビューを使い始めると、3型モニターでも狭く感じるだろう。もっと大きな画面で見たくなる。そこで便利なのがパソコンのモニターで撮影前の像を見られる「リモートライブビュー」機能だ。カメラとパソコンを接続しないといけないのでこれもスタジオ向きだが、フォーカスまでパソコンから操作できるのがスゴイ。もちろんダイレクトに撮影した画像をパソコンに取り込むことも可能。スタジオ撮影が多いカメラマンには強力な武器になるはずだ。
秒10コマを可能にするため全体にパフォーマンスアップ
ライブビューとは逆に、スポーツやポートレートなどの動く被写体に対して強力な武器になるのが最高10コマ/秒の高速連写機能だ。スポーツカメラマンには連写を使わない人もけっこういるが、これは連写の間にベストのタイミングが来ることがあるため。しかし秒10コマもあれば、その心配もずいぶん少なくなるはずだ。普通に使っていると、秒10コマ連写は速すぎるほど。もちろん秒10コマ以下に設定することもできる。
連写性能は単にシャッターの動きを速くすればいいというわけではない。もっともネックになりやすいのは画像処理だが、そのために画像処理エンジン「DEGIC III」を2個も搭載している。使って感じたのは全体のパフォーマンスが非常に高いことだった。例えば連写が速くてもAFが遅ければピンぼけになってしまうわけで、関連したすべての部分に高い性能が必要になる。全体が底上げされている感じなのだ。連写をそれほど多用しなくても、安心して撮影できるはずだ。
AFは非常に快適。たぶん日本最高レベルの速さだろう。暗さにも強い。振り向きざまのレリーズなど、瞬間的な動きにもよく反応する。ただ、AFフレーム(測距点)の選択はカメラまかせの自動選択、もしくは任意の1点という使い分けになるのだが、ファインダー内の広いエリアにAFフレームが置かれていることもあって、メインの被写体ではなく、脇にあるものにピントが取られてしまうこともあった。かといって撮るたびにAFフレームを動かすのもちょっと煩わしい。例えば中央9点だけ使用するといった、AFフレームのグループ化ができればさらに使いやすいのではないか。
下のようにAFテストを行なったが、明るいところ(EV5)の速さは驚異的。平均で0.7秒となった(レリーズから実撮影までの時間)。暗くても(EV1)安定しており、すべてのカメラが苦手としている斜線のターゲットを別にすれば、平均で1.4秒という速さだった。ちなみに、 Mark IIIのレリーズタイムラグは55msだが、最速化設定(C.Fn IV-13)を変更すると最高で約20%高速化されるという。
AFのテストチャート。写真のようなターゲットを用意し、時計の秒針が「12」になると同時にレリーズ。画像から撮影までにかかった時間を読み取った。 |