キヤノンのデジタル一眼レフカメラ「EOS-1D MarkIII」が登場した。プロ用の高価なカメラだが、その性能は気になるところ。このカメラをインプレッションしてみよう。EOS-1D Mark IIIはオープン価格だが、マイコミジャーナル価格情報によると49万8,000円で販売されているようだ。レンズキットなどは用意されておらず、本体(+備品)のみで販売されている。

EOS-1D Mark III

高速モデルも1000万画素へ

キヤノンのプロ用デジタル一眼レフカメラはふたつのラインがある。高画素+35mm判フルサイズ撮像素子の「1Ds」系と、高速連写性能を重視した「1D」系列だ。今回の「EOS-1D Mark III」は後者の1D系の最新モデルにあたる。

最初の「EOS-1D」が発売されたのは2001年12月。415万画素ながら秒8コマの高速性能を備えていた。次の「EOS-1D Mark II」は2004年4月登場。速さは秒8.5コマとあまり変わらないが、画素数が約820万画素と大幅に向上。これにより連写を重視しないプロでも1D系を多く使うようになった。2005年9月にはマイナーバージョンアップ版の「EOS-1D Mark II N」が登場。速さや画素数はMark IIと変わらないが、ピクチャースタイルの採用など、絵づくりや使い勝手の面が改良された。そして2007年5月に登場した「EOS-1D Mark III」は、とうとう1000万オーバーの画素数と、秒10コマの高速連写を手に入れた。

ちなみフルサイズ素子の1Ds系は、初代「EOS-1Ds」が2002年11月登場で1110万画素、秒3コマ。2004年11月に発売され、現行モデルでもある「EOS-1Ds Mark II」が約1670万画素、秒4コマとなっている。また、1D系、1Ds系とも撮像素子はCCDではなく、キヤノン得意のCMOSセンサーを使用している。

1D系の特長のひとつは、撮像素子がフルサイズよりも小さく、普及機で一般的なAPS-Cサイズよりも大きなサイズであること。焦点距離(画角)の換算は約1.3倍となる。そのためデジタル専用レンズのEF-Sシリーズは使用できない。また、1D系でも従来の撮像素子のサイズは28.7×19.1mmだったが、Mark IIIでは28.1×18.7mmとわずかに小さくなった。焦点距離換算(1.3倍)が変わるほどではないが。

EOS-1D Mark IIIのマウントと撮像面

Mark IIIに使われているCMOSセンサー。有効1010万画素

バッテリーはリチウムイオンを採用

高速連写を可能にするのは機械部分だけでなく、新しい画像処理エンジン「DIGIC III」に負う部分も大きい。DIGIC IIIは先にコンパクト機で使われているが、一眼レフでは Mark IIIで初お目見え。さらに Mark IIIでは、このDIGIC IIIを2個搭載し、並列処理を行なっているという。力技である。もちろんDIGIC IIIは絵づくりやノイズ低減にも力を発揮するが、これについては後半で報告したいと思う。

プロ用として重要な点のひとつは、堅牢なボディや防塵・防滴性能だろう。雨だからといて仕事は待ってくれない。 Mark IIIのボディは非常にしっかりしている。外装はもちろん、ミラーボックスなどにもマグネシウムを使っているという。またすべての操作部・合わせ部にシーリングを施し、高い気密性を保っている。

また、バッテリーには新開発のリチウムイオンが使われた。従来はボディ下部を横に貫くようにバッテリーが収まっていたが、 Mark IIIではずいぶんバッテリーが小さくなり、中ほどまでしか届いていない。それでもフル充電で2,200コマが撮影可能とのことで、今回の撮影でも途中でバッテリーが切れるようなことはなかった。残量表示が1%単位で確認できるのもいい(表示パネルでは6段階)。

EOS-1D Mark IIIの正面。従来機と大きさはほとんど同じだが、少し軽くなっている

背面。大型モニターのため左側にボタンはない。マルチセレクターを装備

上面。望遠レンズなど、大きなレンズが似合う

端子類。右の大きなものは新たに設けられた「拡張システム端子」

側面。縦位置用のシャッターボタンやダイヤルも装備する

バッテリーとメディア。バッテリーは新しいリチウムイオン。SDメモリーカードも使える

バッテリー情報表示。電池残量は1%単位で表示(表示パネルは6段階)