NTTドコモ 夏野剛執行役員

NTTドコモは、ずっと携帯電話市場の覇者として君臨し続けている。シェア(2007年3月末)は54.4%、過半数を維持している。だが、2006年度の連結業績は、足踏み気味だ。

売上高は対前年同期比0.5%増の4兆7,881億円、営業利益は予想値を下回る同7.1%減の7,735億円、当期純利益は同25.1%減の4,573億円との結果だった。

MNPでは苦杯をなめている。2006年11月には前月末比で1万7,500件減り、同社としては初めて新規契約数が解約数を下回る純減となった。KDDIの圧倒的な強さのあおりを受けた格好だ。12月には純増に戻したが、結局、2006年度のMNPでは63万の純減だった。

2007年1月の時点で、同社は「通期での見通しは、春商戦だがなかなか苦しい状況であると考えている」(中村維夫社長)とみており、同社から流出する理由として、KDDIに「移動」する場合は「My割」などの料金の点を、ソフトバンクへの場合も当初「隠し球」として用意された「予想外割」など、料金面を挙げていた。

中村社長は、MNPでの苦戦について、料金が高いとのイメージをもたれてしまったこと。ネットワーク面で、つながりにくいと感じられていること――この2つを主な要因として指摘した。特に「競合他社に端末料金をゼロ円、とされたのは辛かった」と率直に語る。ただMNP全体に対しては「契約している事業者を変えると、番号まで変わるというのは『無理スジ』だろう。ユーザーの立場からみれば(MNPは)当然のことで、違和感はない」としている。

MNPでKDDIの後塵を拝したとはいえ、ドコモのMNP以外の「流入」や新規契約の数は多く、2006年度通期の全体の契約数は5,262万1,000、2.9%の増だ。同社は「MNPの影響力は小さくなってきている」(同)と考えている。シェアの規模が極めて大きな同社からすれば、ここまでのMNPの負の効果を吸収できているようだ。ただ、この4月のMNPの結果をみると、8万9,400件の「流出」超過となっている。KDDIは依然好調で、8万4,700件の「流入」超過だが、注目されるのは、ソフトバンクが4,700件のプラスとなり、MNP開始以来、初めて増に転じたことだ。ドコモは一人負けということになる。

それでも、未だ、同社が焦っているようにはみえないが、同社は「変わるドコモ」を強調、「ドコモ2.0」を旗印に「そろそろ反撃してもいいですか」との広告宣伝を始めるなど、危機感が相当強いことはうかがえる。