kDDI 小野寺正社長

KDDIは好調に推移するだろう――そんな予想はMNPが始まる前から指摘されていた。同社自体、自信があるからこそ、MNPの導入に向け、3大事業者の中でも最も積極的な姿勢を示していた。ことMNPについては、auに何らかの不安があるかなどのちょっとした疑問の声すら、ほとんどどこからも聞こえてはこなかった。そして、ふたを開けてみれば、あっけないほどまったく予想通りだった。

まず連結決算だが、売上高が対前年同期比9%増の3兆3,353億円、営業利益は同16.2%増の3,447億円、経常利益は同19.4%増の3,509億円、当期純利益は同2%減の1,867億円で、4期連続で増収、営業増益を果たした。3月末の累計契約数は2,819万で、シェアは29.1%(au28.2%、ツーカー0.9%)、年度純増シェアは55.8%で首位であり、同社がまず確保を図っているシェア30%にぐっと近づいている。

MNPでの現時点までの実績は、まったくの完勝といっていいだろう。2006年度下期のMNPによる「ポートアウト(流出)」は29万7,000、一方「ポ-トイン(流入)」は115万で、差し引き85万3,000ものユーザーを競合他社から勝ち取ったことになる。「待ちに待ったMNPがようやく始まる」(井上正廣・au商品企画本部長: 2006年8月の新端末発表会見での発言)との期待感をもち続けてきたこともうなずける。

同社のMNP競争の順風満帆ぶりは、2006年末、2007年始の商戦後にはすでに概ね明らかになっていたのだが、1月の2006年度第3四半期決算の発表時に、小野寺正社長兼会長はあくまで慎重な見方を示していた。「全体としては、悪い方向には行かない」としたものの、年間契約の節目となる3月にMNP利用が増えると判断、3月の結果を見極めたいとしていたほどだ。

小野寺社長は「MNPで市場全体が活性化した」と評しているが、実際には「MNP以外の純増数も伸び」(同)ている。ここまでのところ、少しも死角がないようにさえみえるが、同社はさらに上を目指し、中期的成長戦略「チャレンジ2010」を策定、2010年度には売上高4兆円、営業利益6,000億円との目標を掲げている。

これを打ち出したのは「危機感があるからこそ」(同)だという。「auを中心に比較的順調だが、逆に目標を失うことが怖い」と話す小野寺社長は、あまりの好調さのなか、同社全体として士気が弛緩してしまうことのないよう、強く戒めている。