コロナ禍で大きく変わったものといえば、企業におけるコミュニケーションのあり方だろう。テレワークが普及したことに合わせて、ビジネスチャットやビデオ会議ツールを導入した企業も多いはずだ。
そうしたなかで存在感を高めているのがZoomの製品群である。ビデオ会議ツールであるZoom Meetingsはもちろん、コールセンター向けの「Zoom Contact Center」や「Zoom Virtual Agent」といった新製品から、生成AIを活用して会議の議事録や要約などを作成する「Zoom IQ」も登場し、注目を集めている。
7月7日、そんなZoomの最新製品情報やユーザー事例などを紹介する「Zoom Experience Day Summer」が東京都内で開催された。
本稿では同イベントで行われたユーザー事例セッションから、株式会社トラストバンク 経営管理本部 経営管理部 総務チーム 名生 恭平氏による「Zoom Phone導入のあれこれ」、千代田化工建設株式会社 ITマネジメント部 コーポレートICTセクション 新長 英年氏による「Zoom Phone導入によるデジタルワークプレイス実現」の内容をレポートする。
テレワーク中心だからこそ起きた電話の課題
トラストバンクは、ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」の運営のほか、自治体向けビジネスチャットや地域通貨プラットフォームサービスなどを運営するIT企業だ。
同社で総務を務める名生氏が入社したのは2021年7月のこと。名生氏は、入社1週目で思いもよらない課題に直面したと話す。
「社外から電話がかかってきているにもかかわらず、社内ではまったく電話が鳴っていない “持ちきり”という状態に遭遇したのです。この経験から、電話をどうにかしなければならないという使命感にかられました」(名生氏)
ほかにも課題はあった。たとえばPBX(電話交換機)が物理的に設置されているため、故障や停電が起こるとそもそも電話自体が使えなくなってしまう。また、PBXを設置していたのが本社ではなく別拠点だったことも懸念事項だった。というのも、もし経営方針の変更等により別拠点を引き払うことになるとPBXや電話回線のリプレイス等が発生し、相当の労力が発生することが明らかであったからだ。
さらに、適切な録音や権限設定ができなかったり、通話の不具合が発生したり、コールセンターの新人オペレーターをリモート環境で指導しにくいといった課題も発生していた。
「電話の設定を変更する場合、以前は従業員から総務に依頼し、総務がとりまとめてベンダーに依頼したものをベンダーがPBXの管理画面から設定するという流れで行っていました。ただ、専門性が高い業務なので属人化しがちなうえに、要件が正しくベンダーに伝わらないこともあります。ベンダーがどう設定したのかも把握できないので、不具合があったときに何が原因なのかわかりづらいという問題もありました」(名生氏)
シンプルな使い勝手と過不足のない機能が魅力
こうした課題を解決するためにも、効率化につながる高い品質や、素人でも内製化できる管理機能を備えた電話の導入が急務だった。そこで同社が導入したのがZoom Phoneである。
同様のサービスと比較検討してZoom Phoneを選んだ理由は主に4つあると名生氏は言う。
1点目は、十分な冗長性を備えていることだ。Zoomはビデオ会議ツールで世界トップクラスのシェアを持つグローバル企業。Zoom Phoneを支える基盤は世界中に展開されており、相互に補完し合う仕組みが確立されている。その点で「安心感は桁違いだった」(名生氏)という。
2点目は、必要な機能がしっかりと整っていることだ。特にIVR(電話自動応答)機能の導入により、月に500~600件あった代表電話の取次が激減したのは快挙だと名生氏は説明する。
それ以外にもZoom Phoneには様々な機能が搭載されている。たとえば、モニタリング・ウィスパリング機能だ。モニタリングとは、オペレーターとエンドユーザーのやりとりを社員が確認できる機能であり、ウィスパリングとはオペレーターにだけ聞こえるようにやりとりができる機能だ。こうした機能の活用により、新人オペレーターの指導問題も解決したという。
また、社用のスマートフォンと違って、Zoom PhoneはPCで電話を受けられる。そのため、「仕事で両手を動かしていても電話できるメリットも生まれた」(名生氏)とのこと。またZoom Phoneの導入により社用スマートフォンは役割を終えたため、今後は貸与しない方針に切り替えた。これにより、大きなコストカットも期待できるという。
3点目は、「管理画面がシンプル」であることだ。電話の知識がなくても設定できるので業務が属人化することもない。名生氏によると、ここがZoom Phoneと競合製品のもっとも大きな違いだったとのことだ。
最後に、トラストバンクではもともとリモート会議ツールとしてZoomを採用していたことも大きかった。新しいシステムを導入する際は少なからずユーザーにストレスがかかるものだが、Zoomの機能の一つということで違和感も生まれずシームレスに導入が進んだという。
Zoom Phone導入の効果について、名生氏は最後に次のようにコメントした。
「Zoom Phoneを導入してから以前のような問題はなくなりました。また、分かりやすく効果が現れたのはIVR機能の導入により、代表電話電話の着信が一切鳴らなくなったことでした。この経験により、いかに今まで無駄な取次業務をしていたのかが可視化され、業務効率化を実感できました」